【本編完結】婚約者には愛する人がいるのでツギハギ令嬢は身を引きます!

ユウ

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第四章

3.奪ったドレス~エイミールside




シャロンが王都の生活に馴染み始めた頃、俺達は忍ぶ恋に身を焦がしていた。
そんな頃に、平民の間ではロマンス小説が大流行りになっていた。


「エイミール、この小説はまるで私達みたいね」

「ああ、そうだな。立場に縛られ、愛を告げることも許されない俺達と同じだ」

切ないラブロマンスは多くの者に受けており、平民に人気だったこの小説は、次第に貴族の令嬢も読むようになった。

そんな折友人に言われたのだ。

「今社交界で流行っている小説、お前とシャロン嬢に似ているな」

「あれか?」

「ああ、今じゃお前達は噂になっているぞ」


俺とシャロンの関係を隠してはいるが若い世代の者は知っていた。
シャロンの美貌では目立つなという方が無理があるのだが、一番目立ったのは先日の王族主催の舞踏会だろう。


「こないだ、シャロン嬢が来ていたドレスは絹のドレスだよな」

「気のせいか、母が聖女様のドレスに似ていると言っていいたが」

「ああ、アドリア―ナの母君の形見だ」

「は?」


王族主催のドレスを新調相としたがどれもしっくりこなかった。
美しいシャロンに相応しいドレスはないかと思っていた時に、シャロンが目に入ったのは先代皇女殿下。


つまりアドリア―ナの母君の着ているドレスだった。
しかしそのドレスは絹と特別な技術で作られており、注文を断られた。


何度言っても無理だと言うので、二度とその店ではドレスを頼まないと言ったのに店の主人は首を縦に振ることはなく、数日後主人は店を閉じたのだ。


ハント侯爵家の注文を断った事で周りから非難されたが、自業自得だろう。
しかし、そんなことはどうでも良かった。

一番に考えるのはシャロンが欲しいと言ったドレスだ。


「その時だ」


公爵家に仕立て屋が出入りしているのを見かけた。


「何時もありがとうございます」

「いいえ、このような大事な仕事をお任せくださりありがとうございます。公爵夫人の形見であるドレスの手直しをさせていただくなんて名誉です」

「そう言っていただけるとお嬢様もお喜びになりますわ。なんせあのドレスはシャンイン様が着ていらしたドレスです。銀の刺繍がされておりますので、普通の仕立てでは傷がつきますので」


この時俺はいい考えが浮かんだ。
新しくオーダーメイドをするのが無理ならば、あのドレスをシャロンに渡せばいいのだ。

アドリア―ナのドレスを差し出せば費用はかからない。
シャロンこそ聖女の装いが似合うのだから、喜んで差し出すだろう。


だが…


「お待ちください。これは母の大事な形見なのです。これだけは…」

「ドレスなど何着も持っているだろう!」

「母との思い出なのです。取り上げないでください!どうか…他のドレスならばすべて差し上げます」

まるで俺が盗人のような良い分じゃないか。

「アリア…どうしてそんな意地悪を言うの?何かも持っていて…ドレスまで強欲だわ」

「シャロンが可哀想だと思わないのか!病弱でドレスだって数着しか持ってないのだぞ」

「ですから他の者を…」

「くどい!」



血の巡りの悪い女だ。
前々から空気の読めない女だとは思っていたがここまでとは。

「それに死んだ母親の影を思うなど見っとも無い真似をするな。軟弱な」

「私は…」

「第一お前にそんなドレスは似合わない…シャロンならばいざ知らずツギハギ令嬢には相応しくない」


聞き分けの悪い、アドリア―ナはようやく納得したのは何も言わなくなった。

「まったく手間を掛けさせるな。行こうシャロン、ドレスに合わせて靴もそろえなくては」

「私、そこにある硝子の靴が良いわ」

「ああ構わない」

これも母親の形見らしいが履かずに後生大事にするなど馬鹿馬鹿しい。

「だが死んだ人間の靴は縁起が悪いからお清めをすべきだな」

俺がそう言い放った時、アドリア―ナは顔を俯かせながらその場を去って行った。

折角のドレスを有効活用してやろうと言うのに失礼な事だ。



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