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15置き忘れた思い
しおりを挟む「君以上に貴族令嬢の品格がある人はいない」
握られた手が熱かった。
指先から感じる体温が気恥ずかしくて、顔をあげることができなかった。
「私は百姓貴族令嬢だって…」
「百姓貴族…立派じゃないか。何も作れない貴族よりも立派だ」
「着飾るよりも農業が好きで」
「労働の美徳だ」
アレクは私のすべてを立派だと言う。
言葉の一言、一言にお世辞ではなく賛美の言葉が恥ずかしすぎた。
「君は行き倒れてた俺を助けてくれた。何も聞かず温かい食事をくれた」
「お腹すかせている人がいたら当然だよ」
「私欲の為しか動かない貴族を何人も見て来た。自分さえよければいい人間は多いんだ」
私にとってお腹を空かせている人がいれば手を差し伸べる。
当然の事だった。
この世で一番つらいのはご飯が食べられない事。
お腹がいっぱいならば、どんな辛いことでも耐えられる。
逆に空腹では人間、ろくなことを考えない。
だから――
「君の元婚約者は己の役目を放棄したんだ。婚約者を守れない男は最低だ」
「でもね…」
「王からお咎めななかったのか?」
「うん…」
「通常、貴族の婚約は勝手に破棄できないはずだ。ならば慰謝料は?」
「えっと、慰謝料変わりに土地と、父の遺品で…」
「は?」
私は何か間違ったことを言っただろうか?
アレクの表情がさっきから怖い。
「婚約破棄をしておいて、君から慰謝料を取るなんてありえない!」
「えっと迷惑料みたいな…」
私との婚約は望まない形だったらしい。
だから無駄に使った時間は返せないとのことだ。
私と婚約したせいで恥ずかしい思いをしたと言っていたし。
「恋人もいて…」
「もういい」
アレクを怒らせてしまった。
どうしよう。
「すまない。君を責めたいわけじゃない。ただ、あまりにも理不尽で…今すぐその男を殺してやりたい」
「ダメだよアレク!」
「君は傷ついたんじゃないか…」
「いや、全然」
傷つくほど関わってない。
嫌味をさんざん言われたけど基本、私は過去は引きずらない。
「私、まったく合わなかったし…関心がなくて」
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私よりもアレクの方が怒っている。
「傷ついたのかな?考えないようにしてたし…仕方ないって思ったから」
「君は期待をしなかった…でも、誠意を持って接したはずだ」
そうなのか?
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折角のご縁だし、恋愛結婚ではなくとも互いに支え合える良き夫婦になれたらとも思った。
でも、結局無理だった。
そうか…
私は諦めてしまったんだ。
何をしても届かないから、無関心になってしまった。
だから農業に…
私の情熱はすべて農業に向けたんだ。
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