64 / 123
52諸悪の根源~アレクside
詳しい事情は知らない。
だが、アンリの言葉でこれまでどれだけの酷い扱いを受けたかは理解できる。
「アンリは領地で貴族令嬢としてではなく召使以下の扱いを受けていたと思います」
「侍女からも報告が上がっている。彼女の体には痣があった…火傷も」
「それは…」
考えたくない。
まさか、故意的に暴力を受けたのか?
「火傷に関しては解らないが、明らかに故意的に殴られた跡や骨折をしたことがある形跡が」
兄上の傍仕えの侍女の中には鑑定医師がいる。
体に触れただけで過去にどんな傷を受けたかか鑑定できるのだ。
過去に骨折したことなども解る。
優れた聖眼といわれるスキルなのだ。
「アンリは何も言いません。彼らを悪く言うことも」
「エディ―殿のご息女だからな。あの方も親族から追いはぎのように奪われても笑っていた。旅に出たのも親族から追い出されたようなものだと聞いている」
「何で…」
どうして笑っているんだ。
何で怒らないんだ。
「きっと、怒っても無駄だからだろうね」
「無駄って…」
「人を憎んで生きていく事は悲しい。エディー殿は幼い私に言ってくださったよ。私を出来損ない呼ばわりする家臣を気の毒だと言っていた」
何故兄上が気の毒なんだ。
憎んで当然だし、怒って当然じゃないか。
「彼は他者を傷つけることでしか己を保てない弱い人間に同情していた」
「え…」
「だから私に行ったよ。強い人間は自分より弱い人間を相手にしないと…私は選ばれた人間だとも」
他人に傷つけられても恨まないなんて強い人だ。
「まぁ、それ以前に羽虫程度を気に留める必要はないとも言われたね」
「羽虫…」
「例えば、頬に蚊が止まっても怒るか?」
「いいえ」
「彼にとってはどの程度なんだよ」
ようするにエディー殿は何も言われても気にしないのはまるで相手にしていないのと同じだと?
「アンリ殿も似たようなものではないか?婚約者には期待していない」
心の中で割り切っていた?
だが、情を持って接していたのは解る。
なのに彼女を利用するだけ利用して捨てた彼らが許せない。
「だが、相応の報いは受けるはずだ」
「受けるのでしょうか」
「水の女神の加護を受けたのであれば。嫌でも痛い目に合うだろ?」
地の女神は慈母を意味する。
水の女神は恵みと災いをもたらし、荒ぶる神に変わることもある。
水害を起こすのは水の神々が怒りを表した時。
「さぁて、どうなるかな?」
「兄上、楽しそうですね」
「ああ」
こんなに楽しそうな兄上を見るのは久しぶりだった。
あなたにおすすめの小説
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです
唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。
すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。
「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて――
一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。
今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい
歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、
裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会
ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った
全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。
辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。
追放された宮廷花師が辺境の荒野に花を咲かせたら、王都の庭園だけが枯れ続けているようです
歩人
ファンタジー
「花を飾るだけの令嬢は不要だ」——王城の庭園を十年守った伯爵令嬢フローラは追放された。
翌月、王城の庭園が一夜にして枯れ果てる。さらに隣国への外交花束を用意できず国際問題に——
フローラの花束に込められた花言葉が、実は外交メッセージそのものだったのだ。
一方、辺境の荒野に降り立ったフローラが地面に触れると花が芽吹き始める。
荒野を花畑に変えていくスローライフの中で、花の感情が色で見える加護が目覚めて——。
【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】
聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。
「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」
甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!?
追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。
【完結】何でも奪っていく妹が、どこまで奪っていくのか実験してみた
東堂大稀(旧:To-do)
恋愛
「リシェンヌとの婚約は破棄だ!」
その言葉が響いた瞬間、公爵令嬢リシェンヌと第三王子ヴィクトルとの十年続いた婚約が終わりを告げた。
「新たな婚約者は貴様の妹のロレッタだ!良いな!」
リシェンヌがめまいを覚える中、第三王子はさらに宣言する。
宣言する彼の横には、リシェンヌの二歳下の妹であるロレッタの嬉しそうな姿があった。
「お姉さま。私、ヴィクトル様のことが好きになってしまったの。ごめんなさいね」
まったく悪びれもしないロレッタの声がリシェンヌには呪いのように聞こえた。実の姉の婚約者を奪ったにもかかわらず、歪んだ喜びの表情を隠そうとしない。
その醜い笑みを、リシェンヌは呆然と見つめていた。
まただ……。
リシェンヌは絶望の中で思う。
彼女は妹が生まれた瞬間から、妹に奪われ続けてきたのだった……。
※全八話 一週間ほどで完結します。
【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。
凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」
リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。
その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。
当然、注目は私達に向く。
ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた──
「私はシファナと共にありたい。」
「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」
(私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。)
妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。
しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。
そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。
それとは逆に、妹は──
※全11話構成です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。