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52諸悪の根源~アレクside
しおりを挟む詳しい事情は知らない。
だが、アンリの言葉でこれまでどれだけの酷い扱いを受けたかは理解できる。
「アンリは領地で貴族令嬢としてではなく召使以下の扱いを受けていたと思います」
「侍女からも報告が上がっている。彼女の体には痣があった…火傷も」
「それは…」
考えたくない。
まさか、故意的に暴力を受けたのか?
「火傷に関しては解らないが、明らかに故意的に殴られた跡や骨折をしたことがある形跡が」
兄上の傍仕えの侍女の中には鑑定医師がいる。
体に触れただけで過去にどんな傷を受けたかか鑑定できるのだ。
過去に骨折したことなども解る。
優れた聖眼といわれるスキルなのだ。
「アンリは何も言いません。彼らを悪く言うことも」
「エディ―殿のご息女だからな。あの方も親族から追いはぎのように奪われても笑っていた。旅に出たのも親族から追い出されたようなものだと聞いている」
「何で…」
どうして笑っているんだ。
何で怒らないんだ。
「きっと、怒っても無駄だからだろうね」
「無駄って…」
「人を憎んで生きていく事は悲しい。エディー殿は幼い私に言ってくださったよ。私を出来損ない呼ばわりする家臣を気の毒だと言っていた」
何故兄上が気の毒なんだ。
憎んで当然だし、怒って当然じゃないか。
「彼は他者を傷つけることでしか己を保てない弱い人間に同情していた」
「え…」
「だから私に行ったよ。強い人間は自分より弱い人間を相手にしないと…私は選ばれた人間だとも」
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「羽虫…」
「例えば、頬に蚊が止まっても怒るか?」
「いいえ」
「彼にとってはどの程度なんだよ」
ようするにエディー殿は何も言われても気にしないのはまるで相手にしていないのと同じだと?
「アンリ殿も似たようなものではないか?婚約者には期待していない」
心の中で割り切っていた?
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なのに彼女を利用するだけ利用して捨てた彼らが許せない。
「だが、相応の報いは受けるはずだ」
「受けるのでしょうか」
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水の女神は恵みと災いをもたらし、荒ぶる神に変わることもある。
水害を起こすのは水の神々が怒りを表した時。
「さぁて、どうなるかな?」
「兄上、楽しそうですね」
「ああ」
こんなに楽しそうな兄上を見るのは久しぶりだった。
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