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閑話フェンリルの報復~アルフside①
しおりを挟む毛並みが寂しい。
今日はご主人に撫でてもらえない。
僕の一日はご主人に撫でてもらうことから始まるのに。
「アルフ」
「ハチ、どうした?」
「ご主人がない。何所ですか?」
キョロキョロとあたりを見渡すハチは不安そうな目で見る。
「ここにはない」
「ご主人の傍に行きたいです」
「僕も傍にいきたい。でも人間のお城には無暗に入るとダメなんだよ」
人間はか弱い存在だ。
僕達のような魔獣でも神獣に近しい存在は恐怖の対象だ。
御せるならば手元に。
無理ならば排除すると言う馬鹿な考えをする。
従魔契約とは本来魔獣側が人間との契約を心から望まないと真の契約は結べない。
なのに人間は傲慢だ。
仮の契約で魔獣を従えていると思いこんでいる。
魔族でもある僕達は人間に従うなんてことはまずない。
誇り高き種族であり長命種の僕達は人間の寿命は息をする程度だ。
だけど過去に僕達が真の契約を結んだ人間は少ないけど存在する。
僕達が主にしたいと望んだ稀有な存在だ。
汚い魂を持つ人間の中で綺麗な魂を持ち。
僕達を抱擁してくれたのがご主人だった。
汚らわしい人間はご主人を脅かす。
「ご主人は何所にいきませんよね?」
「ご主人を悲しませることは許さない」
悪い気がご主人を脅かそうとしている。
「お前達、何していんだ」
「ママは何所?」
ご主人を求めてカキスケとポッポも集まった。
「何で会えないの?」
「ご主人は今会えない。お休みだ」
「ママに会いたい」
優しく朗らかな笑顔。
優しく僕を撫でる手が好きだ。
「どうして主は人間の面倒事に首を突っ込むんだ」
カキスケが不満そうに言う。
人間は愚かだ。
僕は正直、人間がどうなろうとどうでもいい。
でもご主人が困るのは嫌だ。
優しいご主人が悲しむのも。
「ご主人は人間だからだ。同じ種族故に困っていたら助けたいんだろう」
「その同胞に酷い目に合わされたのに?」
ご主人が優しすぎた。
本当なら憎んでいいのに。
夜に時折魘され苦しまされているのに。
それでも恨もうとしない。
それが悲しい。
でも、そんなご主人だから僕達を拾ってくれた。
悲しいけど。
優しいご主人が大好きだ。
「アルフ様…フェンリルが集まって来てます」
「ああ、そうだね」
誰が気づくだろうか。
子犬の姿になって、力を一時的に失っていた犬が。
フェンリルの長だったなんて。
人間達は知る由もないのだから。
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