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第三章.高潔の条件
閑話2.子爵令嬢の思い
しおりを挟む第三王子、ジルベルト様のの妃候補として王妃主催のお茶会に参加した時の事。
「まぁ、貴女がジルベルト殿下の側妃候補の方ですの?」
「はい?」
いきなりぶしつけな事を言ったのは、第一王子、ジュリアス様の婚約者に選ばれてばかりのマリアナ様だった。
既に自分は王太子妃だと言わんばかりの発言で、お茶会を仕切った態度を取っている。
「なんてみすぼらしい帽子、お茶会にふさわしくありませんわ。お外しなさい」
「ですが…」
「まぁ、伯爵令嬢であるマリアナ様に逆らうとは何様ですの」
「これだから身分卑しい者は!」
取り巻きの令嬢達はこれ見よがしに私を侮辱し、わざと私のドレスにジュースをかけた。
「あらごめんなさい。でも…お似合いですわよ?」
「クスクス、帽子職人は引っ込んでなさいな」
大勢の場でこれ以上ない屈辱を浴びせられた。
私の母は一流のデザイナーなのに、一介の帽子職人と馬鹿にされ、追い出されるようにお茶会の席から追い出されてしまった。
苦しくて悲しくて、泣きたくなったが。
こんな連中の前で泣きたくなかった。
そんな時だった。
オリヴィア様に出会ったのは。
きっとあの方は覚えていないでしょうね。
初めて出会ったのはこの日だと言うのが。
「どうかしましたか?」
「誰…」
「申し遅れました私はオリヴィア・シャリエールと申します。何処か具合でも悪い…まぁ、ドレスが」
「あっ…」
汚れたドレスの部分を隠そうとしたが既に遅かった。
こんなみっともない姿を見られたら馬鹿にされる。
それにあの人の妹だなんて…
きっと私を馬鹿にするんだ!
そう思ったら震えが止まらなかった。
「そのままでは染みが広がりますので、染み抜きをいたしましょう」
「えっ?」
「失礼しますね」
そう言って鞄から小瓶を取り出し、液体をかけると染みが消えた。
その後も何度も丁寧に染みを消す作業をしてくださった。
「これで大丈夫ですわ」
「あっ…ありがとうございます」
「いいえ」
貴族令嬢なのになんて手慣れた方なのだろうか。
「お姉様!」
「ベアトリス」
「ここにいらしたの?早くお茶会に戻らないとまたマリアナ姉様に嫌味をネチネチ言われるわよ」
「もう…申し訳ありません。失礼いたします」
「あっ…」
名前だけを名乗り去って行かれた令嬢。
その後私はお茶会の席に戻ると。
「アナスタシア様、大丈夫ですか?」
「ナウシカ様…」
「まったくなんて意地の悪い方なの…あんなのが王子妃なんて、陛下も何をお考えなのでしょう」
同じお妃候補であるナウシカ様が心配してくれた。
「ナウシカ様…あの方は」
「ああ、マリアナ様の妹君のオリヴィア様ですわ」
お茶会の席で遠くの席に座らされている。
ご両親は近くなのにどうしてだろうか?
「オリヴィア様は魔力が少ない理由でご両親からも蔑ろにされているそうですわ。公の場にも極力参加させてもらえないとか」
「酷い…そんな」
「ええ、でも、一番質が悪いのは姉君ね?引き立て役にして恥をかかせているのだから」
まるでいないように扱うなんてなんてことを。
なのに、あの方は見ず知らずで下級貴族である私に優しくしてくださったわ。
もし…私が。
私が第三王子の妃となればあの方は身内になる。
そしたら守って差し上げたい。
優しいオリヴィア様を。
この時、強くそう思ったの。
だから…
今度こそは。
「今度は必ずお守りします」
二度とあの女に傷つけさせないわ。
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