令嬢は大公に溺愛され過ぎている。

ユウ

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出会い

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「これをお祖父様とお父様に」

風の精霊ポッポに手紙を頼む。
見てくれは白い鳥だが、風の精霊は風の如く、早くすぐに届けてくれる。

「お願いね」

こくんと頷くポッポは手紙を銜え、そのまま飛び立つ。

王立図書館でそっとため息をつく。

本の虫であるアレーシャはここが好きだった。
この国で最も大きな王立図書館は学問だけではなく幅広いジャンルで埋め尽くされている。

本だけでなく美術品も置かれており。
観賞しながら優雅にお茶を飲み読書をするのは贅沢だった。


一通り読み終わった本を片付けようとしていると近衛騎士らしき青年が本をバラまいてしまい困り果てていた。

「手伝います」

「え?」

周りに人はいるが声をかける人間はいない。

「あら?これは医学書?それにこれは錬金術の法則ですね」

「えっ…ええ」

「近衛騎士団の方は向学心旺盛なのですね。すばらしいですわ」

本を拾いながらアレーシャは兵法だけでなく学びに精を出しているのは政治に携わる貴族だけではないことに安堵する。

近衛騎士団は貴族から平民までいる。
家柄の良い貴族が隊長になることもあるが辺境伯爵等は王都の貴族とは考え方が違う。

王都では実績もない貴族が偉そうにしているが辺境の地ではそんなもの役に立たない。

「国境の方では今も災害で苦しむ民が多いと伺います」

「ええ、南と北は特に不便な土地ですから。せめて王都に目を向けていただければと思っているのですが」

王都は裕福でも地方は貧しい。
緑豊かである一方で不便で食料も確保するのに難しい。

北の大地は冬が厳しく、南は常夏故に、水不足も影響している。

「ですがその二つの領地がなくては外敵から国を守れません。海から攻めて来た時。陸から責められた時に重要視されるのが‥‥」

アレーシャは我に返る。

(私は何を言っているの!)

近衛騎士団の人に言うべきでなない。
貴族の令嬢がこの国の政治に口出ししてはならないのだ。

しかも一介の侍女如きが口をはさんで言い訳がない。

「ご無礼を」

「どうか顔をお上げください。私は貴女を咎めるつもりはありません」

これがもし気位の高い貴族ならば不敬罪として罰せられたかもしれない。

「ただ驚きました。貴方は侍女でありながら向学心旺盛だ」

「はしたない真似を…」

「何故です?女性が政治に興味を持つということは国のことをそれだけ真剣に考えているのではありませんか」

目を見開き驚く。
こんな風に言ってくれる人はいなかった。

貴族の令嬢はただ夫に従えばいい。
政治のことなど勉強しなくていいと言われていた。

「私は貴女のような女性を好ましく思いますよ」

穏やかに微笑むその人は。
今まで家族に向けられた事がない温かい言葉だった。


「私はレオンハルトと申します姫」

「えっ…」

膝をつかれ手の甲にキスをされる。
近衛騎士としての礼儀は間違っていないが、姫と呼ばれることになれていないので少し驚く。

「私はアレーシャ・プライムでございます」

恐らく宮廷を出入りしている近衛騎士ならば噂を知っているかもしれないが、礼節を重んじて挨拶をする。

「よろしくお願いいたします麗しき姫君」

「はっ…はぁ」

何故か好意的なレオンハルトに首を傾げながらも応じるアレーシャだった。


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