42 / 63
反撃開始
しおりを挟む四大公爵は顔を見合わせる。
長い沈黙の末に出された答えが決まった。
「ここで反対すれば我らは悪者ではありませんか」
「ええ…ここまで言われては」
国の為に私財を投げ売ったアレーシャを賛美しても非難することはできない。
反対に財をほとんど捨て、公爵を立てることができれば公爵家の面子を汚すことはしないと約束したことになる。
「我が国、初で女性に侯爵の地位を授ける!!」
王の宣言により拍手が送られる。
「女性で侯爵の地位だなんて」
「すごいわ…」
「でも私達にもチャンスがあるのではなくて」
貴族の一部は面白くない表情をするがほとんどが賛美しているので反対なんてすれば孤立するので黙っていた。
「旦那様!どういうことですの!」
「声を荒げるな。陛下のお言葉の前でみっともない」
「ですが…こんなこと許されるはずが!」
「許すも何も陛下のご意志だ。王命に逆らうのか」
「それは…」
ルクレチアは悔しそうに唇を噛み締める。
(あの女!姑息な真似を!)
給料明細は常に確認していた。
毎月の給料は根こそぎ奪っていたが、こんな事態になるとは思っていなかった。
今にして思えば王女の教育係にしては給料が少ないと思ったが、深く考えなかった。
アレーシャの能力が足りない所為だと馬鹿にしていたのだ。
普段着ているドレスも型崩れしており宝石だって古臭いものばかりだったからお金がないと思っていた。
(許せない…)
ルクレチアの隣でカテリーナも激怒していた。
「カテリーナ?」
「あんな女が‥‥許せない」
敵意を向ける表情は、まるで恐ろしい鬼のように思えてエリックは目を疑った。
「あんな女が…」
(なんで、そんな恐ろしい目で…)
今まで美しいと思っていたカテリーナ。
時折感情の起伏が激しいと思うこともあったが姉を見る目ではないと感じた。
「めでたい話がまだある。聞いてくれ」
笑みを浮かべながら王は視線を帰る。
「今日の舞踏会は我が弟の帰還を祝う為のものでもある。そしてこの場で弟の婚約が決まったことを皆に祝ってもらいたい」
「えっ?大公殿下が婚約!」
「今日のパーティーはお妃選びじゃなかったの?」
「どうなっているのかしら」
困惑する中王のそばに近づく一人の男性。
「この度は私の為に集まっていただき感謝します。弟のレオンハルトです」
凛々しい表情に周りの令嬢は見惚れるが一部絶句する人物がいる。
(あの騎士が大公殿下!?)
(嘘でしょ!!)
二人は目の前が真っ暗になった。
何故ならレオンハルトを散々罵倒し見下すような言葉を放ったのだ。
相手が大公殿下とは知らずに。
(いえ、でも…)
(あの方が大公殿下ならチャンスがあるわ)
二人はさらに悪だくみを考える。
ならば大公殿下を誘惑して妃の座に就けばいいと考えていた。
正妃の座はまだ発表されていない。
万一自分ではなくとも貴族が夫以外に恋人を作るのは珍しくない。
大公殿下の寵愛を貰えばすべてをひっくり返せると思ったのだ。
(天は私の味方だったようね)
アレーシャに勝てる!そう思った矢先だったが。
「レオンハルトの婚約者は先程侯爵の地位を得たアレーシャだ」
「「は!?」」
婚約者がアレーシャだと知り二人は素っ頓狂な声を上げる。
「レオンハルトが見初め、既に求婚をしている。なんとも情熱的なものよ」
「ええ…どこぞのヘタレと違って男らしいのぉ?」
「母上」
満面の笑みを浮かべる王に対してセラフィーヌの言葉に棘があったが聞き流す。
「アレーシャは実に聡明だ。王室に入りこれからも国の為に力を尽くして欲しい」
「もったいなきお言葉にございます」
膝をつき王自ら渡されるのは婚約指輪だったが‥‥
「そんなこと許されるわけないわ!!」
その最中にカテリーナが声を荒げた。
522
あなたにおすすめの小説
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!
みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。
幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、
いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。
そして――年末の舞踏会の夜。
「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」
エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、
王国の均衡は揺らぎ始める。
誇りを捨てず、誠実を貫く娘。
政の闇に挑む父。
陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。
そして――再び立ち上がる若き王女。
――沈黙は逃げではなく、力の証。
公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。
――荘厳で静謐な政略ロマンス。
(本作品は小説家になろうにも掲載中です)
婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?
ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」
華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。
目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。
──あら、デジャヴ?
「……なるほど」
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです
柚木ゆず
恋愛
コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。
ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる