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第一章国外追放
7.鋼の胃袋
「このジュース美味しいい!」
早朝の時間、朝市を堪能しながらアーデルハイドは自由を満喫していた。
「ここのジュースはもフレッシュだからな!」
「すごく甘いのに後味がさっぱりして最高。最近、お肌の艶も良くなったのよね」
早朝に起きて、フレディーに朝市に行きたいと頼み込み、現在に至る。
「お嬢ちゃん、中々いい舌をしているね?ゴーヤジュースも飲むか?」
「待て、それは素人が飲めるものじゃない」
「飲めたら、フルーツを無料だ!しかも上段にあるの全部な」
「乗った!」
果物屋の店主の言葉に目を輝かせる。
背後では他の客が憐れみの視線を向けているが、アーデルハイドは気にせず挑戦する気だ。
「おい、誰か診療所に連絡しろ」
「絶対飲めないぞ?それどころか気絶するんじゃないか?」
「ああ、島の住人でもジョッキで飲むのは無理なんだから」
実は果物屋の店主は時折、悪戯をする。
とは言え、毒が入っているわけではないが、季節によってつくり過ぎた果物を安く売ろうと考えた企画だった。
半額で売る方法もあるが、それでは面白くないので月に一度だけちゃんチャレンジメニューを考えた。
苦くて飲めないフルーツジュースを提供し、飲めたら賞品を出すという企画だったが。
内容はかなりディープだった。
観光客は勿論、島の住人でも高齢者ぐらいしか飲めないジュースを提供しては診療所のお世話になっているのだ。
「ハイジ!止めろ…あああ!」
流石に無理だろうと思ったフレディーは止めるが、既に遅かった。
ジョッキに手を出し、一気飲みしている。
「「「まずい!死ぬぞ!」」」
見物していた客も悲鳴を上げそうになるが…
「お代わり!」
ズルっ!
数秒で一気飲みしてお代わりを要求した。
「は?飲んだ?」
「あの苦くて酸っぱくて、後味が最悪なゴーヤジュースを」
「ありえねぇ!」
今までチャレンジしたものは即座に失神して口から泡を吐いていたのに、どういうことだろうかと詰め寄る。
「見事だ嬢ちゃん…気に入ったぜ!」
「えへへ」
「お嬢ちゃんの潔さと度胸に完敗だ!大サービスだ!追加だ!」
予定していたフルーツだけでなく今日出荷した高価なフルーツもサービスしてくれた。
「太っ腹ですね!おじさん!」
「あたぼうよ!南国の男は気前がいいんだ。男に二言はない!」
「ありがとうございます!」
観客は茫然とする中、無料でフルーツを手に入れたアーデルハイドはホクホクだった。
「しばらくフルーツに困らないわ。フフッ」
「俺は君の舌と胃袋にびっくりだ」
未だに放心するフレディーはゴーヤジュースを一気飲みした現実を受け入れられないでいた。
「世の中にはもっとまずい飲み物がありますから、問題ありません」
「君はどういう生活をしていたんだ」
実際、侯爵家に居た時にアイシャの悪戯で舌が焼ける様なお茶を飲まされたこともある。
他のお邸では特産物と称して独創的な料理が振る舞われた時も笑顔でいなくてはならいので色々耐えていたので、苦い野菜ジュースなんて可愛いモノだった。
数多の苦労が、ここに来てようやく役に立ったのだった。
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