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第一章国外追放
14.豚の王様
しおりを挟むジャンの好意により、アーデルハイドは土地と家畜を手に入れることができた。
「夢の牧場…なんて素晴らしいのかしら」
「良かったな」
「うん、いっぱい育てて美味しくいただくからね」
「ブヒィ!」
子豚を抱きしめながら、想像する。
脳内に広がるのはトンカツやハムだった。
「自分で育てて食べるのか」
「当然、美味しく育てて最後は美味しくいただきます」
「子豚達は解っていないから、哀れだな」
ペットとして可愛がってもらっていると思っている豚達に同情するフレディーだった。
「しかし、何で芋が」
「これは豚君のご飯」
「ん?」
傍に置かれているのはサツマイモだった。
他にも米も置かれているのだが、家畜のえさにしては豪華だった。
「サツマイモを食べさせるんです。黒豚はサツマイモを食べるとお肉が美味しくなるんで」
「訳が解らん」
「まぁ、見ていてください!」
材料も揃い、牧場も家畜も揃った。
後はじっくり育てるだけだったので、気長に飼育を続けた。
そして黒豚第一号は…
「これはシュニッツェルか?」
「トンカツです」
黒豚で作ったトンカツで試食会が行われた。
「さぁ、どうぞ!」
「うっ…うむ、では」
ジャンは戸惑いながらも、一口食べる。
「何だこれは!美味い‥美味すぎる!」
「本当かい?なっ…何だいこれは!」
「美味い。牛よりも美味い!」
続いてステラとフレディーも食べると、手が止まらなかった。
「豚肉とはこんなに柔らかいのか?」
「種類にもよりますが、黒豚は高級肉です。サツマイモ食べさせたことで肉の旨味は最高レベルになります。後はこれもどうぞ」
「何だ?」
「黒豚のしゃぶしゃぶ」
余った黒豚でしゃぶしゃぶを用意する。
三人はそのまま食べると、目を見開く。
「美味い…美味すぎる」
「さっぱりしているのに、肉汁が!」
「野菜も最高だ!」
パクパクと鍋を平らげる彼等はまったりしていた。
「「「ごちそうさまでした!」」」
完食した後はうっとりした表情をしていた。
「実に美味だ。長らく感じなかった快感だ」
「ああ、もっと食べたいね」
「食べたい」
食べることは生きることだが、幸せになる事でもある。
三人は食べる喜びを改めて知った。
「ジャン、この黒豚君を貰ってくださいますか?」
「は?」
「牧場と家畜をくださったお礼です。大したお礼ではありませんが…」
苦労して育てた黒豚をプレゼントするアーデルハイドに驚く。
どれだけ苦労した解らないが、あっさり手放すなんてありえないと思ったのだが、アーデルハイドはお礼をしたかった。
「本当にいいのか?」
「はい」
「ならばありがたくいただこう。しかし君は本当に素晴らしい…そうだ。正式に牧畜業をしてみないか?君に私の領有している森を譲りたい。そこで豚を育ててくれないか?」
「私が?」
「ああ、私は豚が大好物でね…しかし、最近は育ちが悪い。いい豚を育ててくれたまえ」
トントン拍子に事は進み、平民でありながら領地を持つことになった。
それに伴い菜園も作り、農家に協力して美味しい野菜を作り始めた。
「いやぁ、ラッキーだわ」
「俺は君の強運が恐ろしいぞ」
「ああ、すごい強運だ」
ここまで運のある人間も珍しい。
だが、運がいいだけとは思っていないフレディーだった。
「やはり人徳か」
「だろうね?あの子の持つ天性の素質と、人の良さだね」
いくら運が良くてもここまで上手く行くはずはない。
アーデルハイドはこの島に来てから人との繋がりを大切にして、お世話になった人に感謝していた。
だから、周りは助けようとする。
支えようとするのかもしれない。
「それに収入のほとんどは農家の連中に支払っているからね」
「寄付もしているぞ…」
儲けた金額の半分以下だけ自分のものにして、後は農家に支払っている。
そのお陰で収入が減って、田畑を広げることが難し老夫婦も大助かりだった。
助け合いを大切にして、島の住民もアーデルハイドを支えようと団結するようになり、以前よりも住民達の結束が強まりつつある。
「それに、最近は作物が豊作なんだ」
「ああ、確かに」
「不思議なんだけど、ハイジちゃんが来てからのような」
「気にし過ぎだろ」
いくら何でもそんな偶然があるはずがないと思ったフレディーにステラも考え過ぎかと思い笑った。
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