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第三章栄華が終わる時
13.突きつけられた現実
しおりを挟む全てを失ったモーギュスト同様に、アイシャも学園では孤立していた。
アーデルハイドを追放してから、何もかも上手く行かなかった。
八つ当たりする相手もいなく邸でも癇癪を起していたが、気がまぎれることもない。
食事も日に日に質素になって行くばかりだった。
「うっ…何よこれ」
「味がしないわね」
出された食事は味の薄いスープに固すぎるパンだった。
野菜硬くて食べられた物ではなく、文句を言って使用人に文句を言う。
「何よこれ!こんなのを食べさせるなんてクビよ」
「かしこまりました」
侍女は頭を下げてその場から去って行く。
「は?」
泣きながら土下座をして謝るどころか、そそくさ去って行く。
「待て…お前にまで辞められたら」
「失礼したします!」
グフタスは止めに入るも侍女は逃げるように邸を去って行く。
「お父様、あんな侍女クビにして正解よ」
「他の侍女を雇えばいいではありませんか。それよりもこんな食事捨てましょう」
そういいながら二人は食事を下げるように侍女を呼ぶべく鈴を鳴らすが、使用人は誰一人として来ることはなかった。
「どうして来ないの?」
「まったく、主人が呼んでもすぐ来ないなんて」
「来るはずはないだろう。あの侍女が最後だ」
食事をしながら二人を睨みつける。
「何を言ってますの?」
「侍女がいないとは…」
「我が家にはもう、侍女をはいない。最後の一人を解雇しおって!この馬鹿者が!」
テーブルを叩き睨みつける。
「ならば雇えば…」
「そんな金はない!新しく侍女を雇う金が何処にある?お前が馬鹿な事をしたせいで領地は差し押さえになった。あげくギルドマスターから睨まれ、懇意にしていた者からも金を借りることはできん…担保にできる物がないからな!」
「そんなおかしいわ。領地がないぐらいで…」
「馬鹿か、侯爵家が潤っていたのは莫大な領地とギルド長からの信頼や、領地経営が上手く行っていたからだ。侯爵家の財産は差し押さえになっている」
「どうして!」
これまで裕福な暮らしを当たり前のようにして来た。
高位貴族でありいくつかある侯爵家の中でもランドール家は資産家だったはずだ。
領地を手放すことになったとしても、使用人を雇うことが難しいなんてありえないと思った。
「お父様は侯爵でしょう?」
「私はあくまで代行だ。正式な侯爵家の跡継ぎがいなくなった今、財産はほとんどない。雀の涙程度しかな!あげくお前達が無駄遣いを続けてせいで借金地獄だ…」
「噓でしょ!なんで…」
「正式に義父上が爵位を返上する手続きを取られた。既に貴族ではなくなるだろう」
「どうして!お祖父様はとっくに引退なさってたはずでしょ?決定権なんて…」
アイシャは納得できなかった。
既に引退したレイジにランドール家を動かすだけの権利があるはずないと。
ただの隠居した老人でしかないと馬鹿にしていた。
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