1 / 168
第一章逆行した世界
プロローグ
しおりを挟むサンチェス公爵家。
王族の親族に当たり、祖母は隣国の王女でもある。
我が国では貴族は魔族を魔力を持つ。
特に長女である姉は魔力が強く、社交界の華とも呼ばれている。
文武両道で見目麗しい公爵令嬢の名前はサングリア。
対する妹の名前はマリー。
姉とは違い平凡な少女だった。
美人ではないか愛らしい面立ちだったが、女神の様に美しいと持て囃される姉とは月とスッポンだった。
けれど、マリーは家族が大好きだった。
姉に劣等感を抱くことがなかったのは、幼少期から領地で好きに過ごしてきたことも理由の一つだった。
十歳で姉が王太子殿下の婚約者に選ばれて、世間体を気にした一部の王族はマリーを養女にするか嫁に出して追い出そうとするも優しい父は許さず、領地で過ごさせた。
そのお陰でマリーは豊かな心を育み優しい心を持ちながら育ったが…
幸福な時間はある日突然消えてしまった。
「は?婚約破棄…何言っているの?」
姉の結婚式が近いのでお祝いを兼ねて王都に向かったマリーに悪い報せが入った。
それは姉の婚約が白紙になったことだった。
「お父様、冗談ですよね?お姉様が婚約破棄なんて…あんなに頑張っていたのに」
「冗談ではない」
「本当なのよ」
顔色の悪い母を見る当たり本当だと思った。
「でも‥どうして?いきなり…」
訳が解らないでいた。
二人の婚約は政治的な理由もあって必要なのに何故今更?とも思ったが、今一番気にするべきことは一つだった。
「お姉様は‥」
「部屋に籠っているわ。お願いマリー」
「私達ではどうにもできないんだ。すまない」
申し訳なっそうにする両親にマリーは首を振った。
急いで姉の元に向かい部屋の前に立つ。
「お姉様、マリーです。ここをお開け下さい」
ノックをして姉に声をかけるも反応はない。
「お姉様…」
もう一度ノックをしようとすると扉が開く。
しかし、部屋から出て来たのは変わり果てた姉の姿だった。
「何の用?私を笑いに来たの?」
「えっ…」
「婚約破棄をされて哀れな私を笑いに来たんでしょ!最低だわ」
「えっ…そんな」
何時も厳しくも優しかった姉の姿はない。
公爵家の出来損ないとして罵倒されていた幼少期、姉のサングリアは良く庇ってくれていた。
なのに…
「本当は笑いに来たんでしょ?態々王都に気て…いい気味って思って!」
「痛い!」
壁に押し付けられ、爪が首に食い込む。
(お姉様…変な薬を!)
まるで麻薬をしたかのような目をしている。
婚約破棄がサングリアをここまで追い詰めてしまっているだと気づく。
同時におかしいと感じる。
「止めてくださいお姉様…私はそんなことを」
「うるさい!」
「あっ…」
突き飛ばされた拍子に階段から転落して行く。
「きゃああああ!」
「お嬢様!!」
その後の出来事はよく覚えていない。
ただ、使用人達の悲鳴が聞こえる最中、マリーは意識を失ってしまった。
そして頭を強く打ってしまい、顔に傷が残ったマリーはそのまま領地に返されることになった。
その数日後、サングリアが嫉妬に狂い事件を起こしたことを耳にし、国外追放の身となり公爵家は没落となった。
唯一無関係とされたマリーは温情をかけられ隣国にて祖父母と静かに暮らすことになったが、両親と姉と会う事はなく、祈りながら過ごしこの世を去った。
「お姉様…」
この世を去る最期の時まで姉を心配しながら18歳でこの世を去ったのだった。
13
あなたにおすすめの小説
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
[完結]私、物語りを改竄します。だって、女神様が全否定するんだもん
紅月
恋愛
病気で死んだけど、生まれ変わる前に号泣する女神様に会った。
何やらゲームのパッケージを見て泣きながら怒っている。
「こんなの私の世界で起こるなんて認めない」
あらすじを読んでいた私に向かって女神様は激おこです。
乙女ゲームはやった事ないけど、この悪役令嬢って書かれている女の子に対してのシナリオ、悲惨だ。
どのストーリーを辿っても処刑一択。
ならば私がこの子になってゲームのシナリオ、改ざんすると女神様に言うと号泣していた女神様が全属性の魔力と女神様の加護をくれる、と商談成立。
私は悪役令嬢、アデリーン・アドラー公爵令嬢としてサレイス王国で新しい家族と共に暮らす事になった。
元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち
せいめ
恋愛
侯爵令嬢のアンネマリーは流行り病で生死を彷徨った際に、前世の記憶を思い出す。前世では地球の日本という国で、婚活に勤しむアラサー女子の杏奈であった自分を。
病から回復し、今まで家や家族の為に我慢し、貴族令嬢らしく過ごしてきたことがバカらしくなる。
また、自分を蔑ろにする婚約者の存在を疑問に感じる。
「あんな奴と結婚なんて無理だわー。」
無事に婚約を解消し、自分らしく生きていこうとしたところであったが、不慮の事故で亡くなってしまう。
そして、死んだはずのアンネマリーは、また違う人物にまた生まれ変わる。アンネマリーの記憶は殆ど無く、杏奈の記憶が強く残った状態で。
生まれ変わったのは、アンネマリーが亡くなってすぐ、アンネマリーの従姉妹のマリーベルとしてだった。
マリーベルはアンネマリーの記憶がほぼ無いので気付かないが、見た目だけでなく言動や所作がアンネマリーにとても似ていることで、かつての家族や親族、友人が興味を持つようになる。
「従姉妹だし、多少は似ていたっておかしくないじゃない。」
三度目の人生はどうなる⁈
まずはアンネマリー編から。
誤字脱字、お許しください。
素人のご都合主義の小説です。申し訳ありません。
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─
江崎美彩
恋愛
侯爵家の令嬢エレナ・トワインは王太子殿下の婚約者……のはずなのに、正式に発表されないまま月日が過ぎている。
王太子殿下も通う王立学園に入学して数日たったある日、階段から転げ落ちたエレナは、オタク女子高生だった恵玲奈の記憶を思い出す。
『えっ? もしかしてわたし転生してる?』
でも肝心の転生先の作品もヒロインなのか悪役なのかモブなのかもわからない。エレナの記憶も恵玲奈の記憶も曖昧で、エレナの王太子殿下に対する一方的な恋心だけしか手がかりがない。
王太子殿下の発表されていない婚約者って、やっぱり悪役令嬢だから殿下の婚約者として正式に発表されてないの? このまま婚約者の座に固執して、断罪されたりしたらどうしよう!
『婚約者から妹としか思われてないと思い込んで悪役令嬢になる前に身をひこうとしている侯爵令嬢(転生者)』と『婚約者から兄としか思われていないと思い込んで自制している王太子様』の勘違いからすれ違いしたり、謀略に巻き込まれてすれ違いしたりする物語です。
長編ですが、一話一話はさっくり読めるように短めです。
『小説家になろう』『カクヨム』にも投稿しています。
【完結】能力が無くても聖女ですか?
天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。
十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に…
無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。
周囲は国王の命令だと我慢する日々。
だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に…
行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる…
「おぉー聖女様ぁ」
眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた…
タイトル変更しました
召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です
異世界転生公爵令嬢は、オタク知識で世界を救う。
ふわふわ
恋愛
過労死したオタク女子SE・桜井美咲は、アストラル王国の公爵令嬢エリアナとして転生。
前世知識フル装備でEDTA(重金属解毒)、ペニシリン、輸血、輪作・土壌改良、下水道整備、時計や文字の改良まで――「ラノベで読んだ」「ゲームで見た」を現実にして、疫病と貧困にあえぐ世界を丸ごとアップデートしていく。
婚約破棄→ザマァから始まり、医学革命・農業革命・衛生革命で「狂気のお嬢様」呼ばわりから一転“聖女様”に。
国家間の緊張が高まる中、平和のために隣国アリディアの第一王子レオナルド(5歳→6歳)と政略婚約→結婚へ。
無邪気で健気な“甘えん坊王子”に日々萌え悶えつつも、彼の未来の王としての成長を支え合う「清らかで温かい夫婦日常」と「社会を良くする小さな革命」を描く、爽快×癒しの異世界恋愛ザマァ物語。
巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について
みん
恋愛
【モブ】シリーズ①(本編)
異世界を救うために聖女として、3人の女性が召喚された。しかし、召喚された先に4人の女性が顕れた。そう、私はその召喚に巻き込まれたのだ。巻き込まれなので、特に何かを持っていると言う事は無く…と思っていたが、この世界ではレアな魔法使いらしい。でも、日本に還りたいから秘密にしておく。ただただ、目立ちたくないのでひっそりと過ごす事を心掛けていた。
それなのに、周りはおまけのくせにと悪意を向けてくる。それでも、聖女3人のお姉さん達が私を可愛がって守ってくれるお陰でやり過ごす事ができました。
そして、3年後、聖女の仕事が終わり、皆で日本に還れる事に。いざ、魔法陣展開で日本へ!となったところで…!?
R4.6.5
なろうでの投稿を始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる