今日から悪役令嬢になります！～私が溺愛されてどうすんだ！

第二章もう一つのルート

8.最恐の組み合わせ

これまでマリーの我儘を許して来たリリアンヌやお付き侍女は猛反対した。

「相手は王妃様よ。何かあったらどうするの」

「そうですわ。お嬢様」


通常、王妃の側仕え侍女は伯爵夫人以上で、優秀な人材を厳選している。
見習いの侍女ですら傍に行くことは許されない。


「陛下、こればかりは！」

「うむ…」

「パパ、絶対に王妃様に無礼はしません。私一人でお世話もしません」


アスランを見つめる目は意地らしかった。

「王妃殿下は私の義理のお母様になります。できるだけ長生きして元気でいて欲しいんです」


「許す！」

「「「陛下ぁぁぁ！」」」


あっさり許可を出すアスランは既に娘に甘かった。


「良いではないか、常にハリソン夫人が傍にいれば大事無い。そうであろう？」

「まぁ、確かに」

「ハリソン夫人、止めてください！」


元よりハリソン夫人は不安を抱いても、猛反対はしていない。


「私は嬉しいぞ…妻をそこまで思ってくれて。感動した」

「パパ！」

「マリー！」


二人は抱き合いながら涙を流すが、二束三文芝居を見せられている気分だったリリアンヌは胃薬を用意した。


「ああ…胃が痛い」

「奥様」


この二人がタッグを組めば最悪だった。


これ以上暴走されはこちらの身が持たない。


「じゃあ、ムックに美味しいご飯を作ってもらいましょう」


「お嬢様、王妃様の食事にまさか田舎料理を」

「そうだけど？」


領地で料理を作ってくれている料理人。
元は漁師の妻でもあり肝っ玉母ちゃんで現在高齢でもある。


「ムック婆ちゃんのスープは天下一品よ」

「相手は国母なのですが…庶民の食べるスープなんて」

「でも栄養満点だし」


王妃殿下に農民が毎日のように食べる郷土料理を食べさせるなんてとんでもないことだった。


「私も食べたいぞ」

「陛下…」


止めようとしても最大の障害が立ちはだかる。
一国の王が食べたいと言えば断る術もなく、試食会を行った後に、スープを気に入ったアスランの命令で料理を作る許可が下りた。


しかも漁師の料理に味を占めたのか、アスランの食事には田舎料理が一品が追加されることになるのだった。



「ああ…なんということを」

「奥様！気を確かに」


リリアンヌとアンナは絶望しか見えなかった。