今日から悪役令嬢になります!~私が溺愛されてどうすんだ!

ユウ

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第二章もう一つのルート

9.王妃

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アスランの口添えでマリーはメイドとして王妃様の部屋に入る事が叶ったが。


「うわぁー…空気が悪い」


締め切った空気に、喚起はしないでアロマの香が酷い。
カーテンも清潔を保っているが暗い色が多く、精神的にも問題がある。


「これ、病気になれって言っているようなものだわ」

「アンナもそう思いますわ」

空気の悪さに、家具の配置と花も悪すぎる。
あげくの果てに光が全く入らない状態で、食事もほとんど食べていないようだわ。


「誰…誰かいるの?」


寝たきりの王妃様が辛そうに声を上げる。
枕にはベルが置いてるけど、この状態でベルなんて鳴らせないだろう。


「本日より、王妃殿下のお世話を任されました。マリーと申します」

「もう私は無理なのよ」


力なく手を伸ばそうとする手は痩せてしまい、肌も乾燥している。

「王妃殿下」

「お嬢様…」


マリーは迷いなくその手に触れる。

「こんな風に誰に手を握られるのは何時以来かしら」

冷たくなった手。
人肌を感じない温度に、随分長い間、誰とも触れ合わなかったのだと気づく。


「せめて…あの子が成人する姿を見たかった」

「王妃様…」

「でも、病気が移ったら大変だもの。陛下にも」


この言葉で解った。
夫と息子を心から愛する妻だった。

そして母でもある。


「ならば見ましょう。王妃様」

「無理よ…」

「無理じゃありません。私が必ず王妃様を救って見せます」


マリーは涙をこらえようとしても止められなかった。


こんなにも強い人を。

こんなにも愛情深い人が、このまま孤独に死んでいいはずがない。

「温かいわ…」


「王妃様…」


絶対に死なせない。
何が何でも助けて見せると誓った。


優しいアレクシスとアスランを思い出す。


「あんなに優しい人を悲しませていいはずがないわ。そうでしょ?」

「はい…はい!」


アンナは涙を流しながらも耐えるマリーを見て居た堪れなくなった。


誰よりも優しく情愛の深いマリーは領地でも病で苦しむ領民を救うべく奔走した。

子供に出来たことは少ない。
それでも薬草を探すために危険な山に入ったり。

教会に雨の日も、風の日も、通い続けた。

優しいさと強さを併せ持つマリーを慕う領民は知っていた。


貴族令嬢としての美しさや気品以上の物をマリーは持っている。


アンナはもし、王妃を救えるとしたらマリーしかいないかもしれないと確信を持てた。


「直ぐにカーテンを開けて、光を入れて…喚起を徹底して」

「はい」

「部屋の中が乾燥しているから濡れた布を用意して、アロマは処分」



「はっ‥はい」


持てる知識を使い、マリーは奔走した。


王妃を救うために出来る限りの事をする為に。


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