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第五章.悪女と聖女
2.一人ぼっち
しおりを挟む何をしても上手く行かない。
領地にいた時からずっと、何もかも番狂わせな事ばかりだった。
(どうしてよ!)
サングリアは領地での暮らしは慣れることがなかった。
公爵家の使用人はサングリアに苦言を申すことが多く、不愉快だった。
使用人は子爵家以下の下級貴族出身で、中には平民もいた。
サンチェスト公爵家では平民だからと言って身分差別するような考えはないので、普通なのだが。
宮廷貴族の暮らしが根強く染みついている所為で、同じように振舞ってしまった。
その所為で使用人からも反感を買うことが多かったがチャールズが間に入っていたが、チャールズ自身もサングリアに思う所があったのだ。
婚約者である自分を一番に守るべきなのに、時折邸に咲いている薔薇を見てため息をつく姿を見て苛立った。
聞けば、邸の庭に咲いている薔薇はマリーが大好きだった品種だと知らされた。
王都の花屋で売られているような豪華な薔薇ではなく小さな薔薇だったが、チャールズはその薔薇を大事にしていた。
遠回しに、サングリアよりもマリーを慕っていると言っているも同然だったことが許せず。
極めつけに王都ではマリーが王太子妃候補として正式に選ばれた事を聞いて不愉快になるが、婚約者にすぎないのだと軽く考えていたのだが、両陛下の視察旅行にマリーが同席している噂を聞き、目の前が真っ暗になった。
自分の時は、そんなことなかったのに。
あくまで婚約者候補として、お茶会の参加は許されても、それ以上は許されなかった。
アレクシスは聡明であるが警戒心が強く慎重だった。
その為、婚約者であっても他人行儀な接し方をされていた事を不満に思っていた。
しかし本人からは。
「婚約者といっても他人だ。これ以上は立ち入らないでくれ」
強く拒絶されてしまい、アレクシスを怒らせてしまった。
温和で優しいアスランも、優しく拒絶されてしまったことを悔しく思った。
なのにマリーは何故違うのか。
礼儀作法も、教養も、美貌さえも自分の方が勝っているのに。
どうしてマリーだけがちやほやされるのか解らない。
「所詮はお飾りなのに…何でマリーが好かれるのよ。私の時は誰もいなかったのに」
王族派筆頭のジョアンナだけでなく、他の令嬢はマリーを庇っていた。
「私の時は…いないのに。どうして…私とマリーの立場が変わっただけなのに!」
ギリッと親指を噛みながら、庭に見える薔薇を引きちぎる。
「そうせ花の一生短いわ。悪役令嬢として散るんだから…今だけよ」
薔薇を床に落とし足で踏みつけそのまま去って行くのだった。
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