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第六章.逆行した世界で
2.拒絶
しおりを挟むジョアンナは高位貴族でありながらも心が満たされたことはなかった。
幼少期から厳しい教育を受け、両親から優しい言葉をかけられたこともない。
分家筋の親族からは、妬みの視線か、媚びを売りながらもどうやって失脚させるかという視線ばかりだった。
口では調子のいいことをいいながらも本心は明け透けだった。
周りの取り巻きも同じで、心から心配してくれる人間は少なかったのだった。
対するサングリアは、両親から期待をされるも、愛情を持って接していた。
自分の所為で妹が王都に追放になりながらも、その本人であるマリーはサングリアを恨むどころか慕っていた。
挙句、サングリアの我儘で婚約者と引き離され、慣れない王都で苦労していたのにサングリアはマリーに負い目を感じる素振りもなかった。
正直、許せないと思った。
妹の人生を狂わせておいて、平然と振舞う傲慢さ。
今もマリーを苦しめている事が許せない。
(私だったらそんな愚かな真似しませんわ)
ここまで慕ってくれる妹がいたら、厳しい事を言っても大切にする自信はある。
実際、マリーに淑女教育をしているのはジョアンナでもある。
二人は社交場では姉妹のようだと言う者も少なくない。
元々ノルマディア公爵家は王太子妃の教育を任されていた。
従妹同士ということもあるので、後ろ盾となるのは当然だったのでおかしくない。
補足すると元婚約者であったジョアンナのお墨付きを貰ったと勝手に噂が流れていたおかげもあって、二人が仲睦まじく過ごすことに悪い事はなかった。
素直過ぎるのは時期王妃として少し問題であるが、その場合は側にいる者がしっかりしていればどうにかなるので、ジョアンナは追々考えていた。
既に姉というよりも母親という心境だったのだが…。
「マリー様、この際はっきりいいますわ」
「はい」
「姉妹であっても相容れないことはありますわ。どんなに心を尽くしても踏みにじる人間はいますのよ」
厳しい言い方をするが、マリーの身の安全を考えれば仕方ないとも思った。
「私は、彼女の行動がない物ねだりをして癇癪を起す子供にしか見えません。人の物を欲しがり、手に入れたら興味を無くすような、愚かな子供に」
「ジョアンナ様…」
「王太子妃の座は誰もが羨む地位に見えますが、その重圧や苦労が解らないから言えますのよ?」
マリーにはその言葉が重く感じた。
今でさえ苦労しているのに、正式に王太子妃となれば苦労は増える。
それでも、今まで支えられ、守られて来たからなんとかなったのだ。
「私は、他者を慈しめない者を国母に認めません。自分だけが良ければいい良いと言う方を国母にしたくありません。マリー様の大切な姉君であろうとも…私は認めませんわ」
これまでサングリアに対して曖昧な言い方をしていたジョアンナははっきりと拒絶を示した。
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