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第六章.逆行した世界で
1.見えない心
しおりを挟む昨日の出来事から数日過ぎ、マリーはもやもやした気持ちのまま過ごしていた。
「マリー様、作り過ぎです!」
「え?」
鍋をかき混ぜ続けるマリーにクラスメイトは声をかけると。
目の前には大量のポーションが出来上がっていた。
「あっ、やっちゃった」
考え事をしていたので、ついうっかり作り過ぎてしまった。
「どうしたんですか」
「何でもありません」
本当は大丈夫ではないが、今は授業に集中しなくてはと言い聞かせる。
「マリー様」
「ジョアンナ様?」
心配そうに見つめるジョアンナはマリーを呼び止める。
「サングリア様の事でしたら気になさる必要はありませんわ」
「えっ…」
「お顔に書いてましてよ?気にしているのでしょう」
マリーが授業に集中できない理由は言うまでもないのは明白だったが、今は気にしてはいけないと告げる。
「私は、何か悪い事をしてしまったのでしょうか」
「貴女は何も悪くありません」
「私、あそこまで姉に恨まれているなんて知りませんでした」
幼少期からサングリアにはよく怒られていたことはあっても、そこまで憎まれた記憶はない。
唯一あるとしたらあの時だった。
(時が戻る前に会った時…)
本当の意味で決別することになったあの日だった。
(お姉様はアレクシス様が好きなの?)
王太子妃になるのを望んでいなかったのだと思った。
もしくは王太子妃となるのが重荷に感じているとも思ったが、真実は解らない。
「姉は、私の手助けをしたいと言って、跡継ぎになることを選ばれました…でも、その心の底ではどう思っていた鎌で深く考えていませんでした。やっぱり私は馬鹿ですね」
人の心の裏まで読むことは誰にもできない。
察そうと努力しても難しい事なのでジョアンナですら解らない。
「他人の心をすべて理解するなんて無理なのです。血の繋がった姉妹でも、身近な他人のような物」
「ジョアンナ様…」
「私は両親をそう思ってます。ですから、マリー様が少し羨ましいです」
家族と言えど距離があり、幼少期から言葉を交わすことも少なかった両親を思い出す。
サンチェスト公爵家は高位貴族でありながら少しだけ、特殊だった。
特に王族や高位貴族等は、生まれてすぐに親から引き離されることが多い。
例外があっても、両親と過ごす時間はあまりない。
家族で仲睦まじいなんてことは稀だった。
ジョアンナの両親も同じで、同じ敷地内とは言えど他邸内で顔を合わすことは少ない。
セレシアのように辺境地で身を寄せ合いながら生活する貴族はともかく、ロザリアの実家のように資産家で裕福な高位貴族の場合は、家族関係が良くないのは珍しくなかった。
「私はサングリア様が嫌いですわ」
「ええ!」
「こんなにも大切にしてくださる家族がいて、それすら気づかない」
ジョアンナが欲して来た物を当然のように手放すサングリアが嫌いだった。
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