【完結】聖女を愛する婚約者に婚約破棄を突きつけられましたが、愛する人と幸せになります!

ユウ

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第一章光の少年と癒しの歌姫

29闇の中

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真っ暗な世界だった。


(ここは何処だ?)


レグルスは目を覚ますと何も見えない真っ暗な世界に一人取り残されていた。


(どうなったんだ…僕は失敗したのか?)


レグルスはあの夜一人抜け出し、海底の珊瑚の元に向かった。
王家に伝わる剣を持ち、その身を捧げようと覚悟した。


王家の者としての責任や義務感だけではない。
愛する人を守りたいという思いも強かったからこそ覚悟をした。


(僕では力不足だったのか…)


情けなさを感じる中、ふと頬に当たる蛍。


「何だ…この光は」

灯がない中、蛍が光となるも。
傍には何も見えなかったが、蛍の光が強くなるにつれて何かが聞こえてくる。


「何だ…この雑音は」

耳に聞こえる雑音がしっかりと聞こえてくるようになった。



そしてその声は、かつてレグルスを苦しめた声だった。



『やはりレグルス殿下を…』

『リュミエール殿下を廃嫡に』

『二人も不要だ』



聞こえてくる声は幼い頃から聞かされた嫌な声。


『今のうちに我が娘と』

『例え聡明でも加護無しだ』


第一王子として生まれながらも加護無しで生まれたリュミエールは聡明であったが、文武両道ではなかった。

努力の末に得た知識、民を思いやるあまり貴族から罵倒を浴びせられて来た。
そして婚約者である女性はレグルスにも色目を使っていた。

それを知っていた兄は決してレグルスを責めようともしない。
言葉に出す事も態度に出す事もせずにいた。


(何故今さら…こんな!)


兄を尊敬し、敬愛しているレグルスを苦しめる声。


『本当は自分が相応しいと思っているんだろ?』

「誰だ!」

振り返ると背後から抱きしめるのは。

「僕?」

「そう、僕は君だよ…ねぇ、本当は兄上が憎いんでしょ?邪魔なんでしょう?」

「何を…」


もう一人の自分が話しかける。
耳元で直接囁く声はレグルスの心の闇に触れて来る。


「すべてを奪う兄上、両親の愛情も、継承権も…何もかも」

「違う…」

「僕は兄上のスペアでしかない。父上も母上もも僕に関心はなかった。だから近衛騎士に任せた。そして今僕が犠牲になっても誰も悲しまないよ」

「違う…違っ…」

「違わないよ。誰が君がいなくなるのを悲しんでくれる?大事なのは兄上だけだった。今も昔も」


息ができない程苦しくなる。
第一王子である兄はこれまで優遇されて来た。
両親からの期待も背負い誰からも愛される存在だったがレグルスは第二王子であったが…


「兄上は全て持っているのに加護を持たない。その所為で僕に嫉妬した。強欲な男だよ」

「違う…」

「そう思いたいだけでしょ?現に兄上は僕と距離を持ち始めた。父上も母上も言っていたじゃないか。何故兄上なんだ?何故僕がじゃなかったんだって」



「あっ…」


首を絞められ、息ができなくなる。
光は消え、何も見えなくなるレグルスは再び暗闇の中に囚われてしまった。

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