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第二章聖女と勇者と巫女
16為政者として
しおりを挟む数々の無礼をしたダルタニアン伯爵とその友人達や親族はその後社交界の出入りが禁じられた。
公に禁じられたわけではないが、周りが許さなかった。
社交界では噂により糾弾され、その親族も冷たい目で見られるだけではなく、王族派の貴族に暴行を受けたり取引を妨害され財を失うように仕向けたり、外に出られないように裏工作をしていた。
自動的に社交界から追放になり、しかも死んだ者への侮辱。
王女殿下、そして亡き王妃をも侮辱した罪は重かったので爵位を取り合げるだけでは済まなかった。
通常なら伯爵から男爵に降格になり程度だが、ダルタニアン伯爵は裏で人身売買や密輸をしていた事が明らかになった。
そして目下の敵であるオンディーヌを邪魔に思っていた事から学園での出来事にも介入していた事が解った。
「聞きましてあの話」
「ええ…ですが、間抜けですわね」
「公の場で酒に酔っていたとは言え、王女殿下を侮辱するとは」
「本当に」
今日も社交界で噂好きの夫人達がヒソヒソ話している。
その光景を見ながら二人の男女が笑みを浮かべていたのだった。
「計画通りだ」
「あの酒には少々薬を盛っていたのですが…気づかないとは」
実は今回のお披露目ではオンディーヌを追放した貴族派と未だに王族を操ろうとする貴族派達を一掃する為にカモフラージュをしていたのだ。
事前に酒に薬を混ぜておいた。
その協力者は――。
「ご苦労でした」
「いいえ、私もあの男は許せません。そして学園で正義の味方気取りの愚か者も」
「テティア嬢、感謝いたします」
今回の計画の功労者はテティアだった。
彼女はオンディーヌが追放されてからずっと考えていた。
例え学園で事を起こした生徒を罰してもその親が庇い、もみ消すだろう。
王族も大勢の貴族を敵に回す事はできないし、その所為で政治に問題が起きれば本末転倒だからだ。
ならば、邪魔な連中を公の場で醜態をさらさせ、第三者から罰せさせる事。
噂で消す方法が一番確実だった。
「セイレーンの涙。恐ろしい効果だな」
「相手の感情をさらけ出させる薬です。酒に混ぜてしまえば簡単ですわ」
懐から出した瓶を見せる。
特殊な薬品で人の感情を簡単に口にする事ができる。
しかもセイレーンの合図でだ。
「あの場であそこまで簡単に踊ってくれるとは」
「怖いですわよ」
「私の計画に乗り気だったではありませんか」
二人の女性は無邪気な笑みを浮かべているが考えている事は腹黒い。
「よろしいのですかアン王女」
「私は清廉潔白ではありませんわ。人を恨むし殺したいと思う事もあります。あの時私は本気で人を殺してやりたくなりました」
大切な人を奪われた日、アンジェリークの中にもう一つの心が芽生えてしまったのだった。
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