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第一章
32婚約破棄と慰謝料
しおりを挟む既に婚約したことは世間に知られている。
私は夫人会でも自慢していた事から現段階で婚約が白紙になったらどうなるか。
なんとしても止めなくてはと思ったけど。
「婚約破棄をさせていただきますわ」
「ええ、当然ですわ。慰謝料も請求させもらいます」
なんて厚かましいの。
勝手に婚約破棄をしてあまつさえ、慰謝料を請求するなんて!
「馬鹿な、婚約破棄をして慰謝料を支払うのはそっちだ!」
「フッ、本当に物を知らない男」
「は?」
冷ややかな笑みを向けるミリアル。
あの何も考えていない馬鹿な女とは思えない。
まるで嘲笑うかのように。
「婚約破棄をした場合、婚約破棄を申し出た側が慰謝料を支払うのは過失のある場合」
「だろう!だから…」
「経歴を偽り、詐欺を行った時点で貴方達に過失はありますわ」
「真面に学校を出ているのに何を学んでいたんだ…本当にディアス殿の息子か怪しくなるな」
この男。
何処までも私を馬鹿にしたら気が済むの。
「ディアス様は王立学園首席で合格して大変優秀だったというのに」
「ディアス様の聡明さはご息女のマリー様が受け継がれたのね?マリー様も学園ではそれはもう優秀で評判でしたもの」
あまつさえあんな出来損ないを褒めちぎるなんて不愉快だわ。
「無礼な!」
「言葉の聞き方も知らないようだな」
「本当にお話になりませんわ。弁護士を立ててお伺いしますわ。王都に来ることはできないでしょうしね?」
勝手に話を進め、婚約破棄の書類に、慰謝料を請求する書類を残して去って行く。
「待ってくれ、ミリアル。俺を愛しているんだろ…これぐらい許してくれても」
「愛している?」
「ああ、俺は君を…」
なのにあれだけ侮辱をされたというのに情けない事を。
あんな女に縋るなんて情けない。
「シェパード止めなさい。貴方ならこの程度の女は必要ないわ」
「母上!」
「所詮は伯爵。しかも中位貴族じゃない」
そうよ。
妹に跡継ぎを譲るような出来損ないじゃない。
さっきから聞いていればディアスやマリーを優秀だなんて。
馬鹿だわ。
「元夫は真面目だけな取り柄の出来損ないです。あんなのが…」
「何も知らぬのですね」
「は?」
「ディアス様は王立学園では首席でした。しかも国王陛下のご学友です」
「ご学友…」
何を言っているの?
あの男は元男爵の三男で国王陛下がそんなはずは――。
「当時、王子であらした陛下はディアス様と出会いご学友になられましたのよ…あの方は他にも高位貴族にご友人が降ります」
「子爵家如きに婿養子に行くことを嘆く声は多い程優秀でしたのよ」
嘘よ…
そんなのありえない。
「この度の離縁は喜ぶ方が多いでしょうね?優秀なあの方を欲しがる人は多いでしょうから」
「まぁ、関係ないでしょうからな」
「ではごきげんよう」
彼等はそのまま邸を出て行き、後悔だけが残っていた。
そしてその数日後、私はとんでもない宝を手放したことを知ることになるのだった。
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