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序章ヒロインの親友として転生
5ゲンキンなヒロイン
しおりを挟むその夜、アリーシャは直ぐに態度の悪さを謝罪した。
視察にし来た貴族達に心無い言葉を言われ続けた事やこれまでの事で未来に希望を持てなかった事を話すと誰も咎めなかった。
「もういいのです」
「先生…」
「私ももっ考慮すべきでした。貴女の気持ちを考えもせずに」
年長者でありアリーシャに負担をかけた事も否めなかった。
他の子供達の面倒も頼んでいたが、まだ11歳なのに求め過ぎたのかもしれないと反省した。
「馬鹿だなアリーシャ。貴族になってもガサツなお前じゃ無理無理!」
「視察に来るおばさんみたいなごてごてなドレスとかないよな!」
「ちょっと!」
茶化す子供達に涙も引っ込む。
「私は自分の力でお姫様になってやるは!そしてこの世の男達を膝まづかせてやる!」
「アリーシャ!」
「それ、お姫様じゃないわよ」
躾に煩い院長は直ぐに止めるが、何時もの調子に戻ったのでひとまず安どしたリーシエは葡萄パンをかじる。
「うん、やっぱ葡萄パンは最高ね」
「そんでお前は何時もドライだよな」
「そんなのでお腹は満たされないわ」
実に現実主義な性格をしていたリーシェは恋よりも料理だった。
そして最優先はお腹が満たされてこそだった。
「私は農家の人が良いわ。食材を沢山持っている人」
「リーシェは少し女らしさと愛らしさを持って生まれてきた方が良かったね」
さりげなく失礼な事を言う友人を無視して葡萄パンを頬張った。
――所変わってシェーメルス王国の王宮の別邸にて。
「何だと!ルークシオン様が食事をしたと」
「はい…旅先で葡萄パンと葡萄ジュースを召し上がったそうで」
「なっ!旅先で口にされたのか!」
王家に使える老執事が狼狽していた。
「これまで偏食家で何も口にされなかったと言うのに」
「はい…毒見をする前にお召し上がりになられたので驚きましたが。パンからは毒は一切ありませんでしたのですが」
「あまりにも不用心と言いたいが…ルクシオン様の命を救ったのであれば咎められぬ」
老執事ブライアンは悩みがあった。
シェーメルス王国は長い間問題を抱えていたのだ。
その問題の一つとして。
第二王子のルクシオンは大変な偏食家で現在は拒食症状になっていた。
医師にはこのままでは命も危ういとまで言われ、一時王都を出て療養していたのだが。
その療養先近くに頼った時にルクシオンは護衛の目を盗んで行方をくらませた。
その先で体調を崩して倒れた時に親切な少女がと葡萄パンと葡萄ジュースを差し出してくれたそうだ。
葡萄パンと葡萄ジュースを飲んだルクシオンは不思議な事に今まで何を食べても味がしなかったのに、味がした。
彼は偏食家ではなく味覚障害に苦しんでいたのだ。
それ以降、小食であるが少しずつ食欲を取り戻したのだが、まだ栄養が足りずな宮廷料理人を雇いルクシオンに食事を食べさせようと試みているのだ。
「宮廷に出入りするソムリエ、パン職人を呼んだのですが…旅先で口にした葡萄パンと葡萄ジュースには勝らなかったようで」
「なんとしても探すのだ」
「ハッ!」
ブライアンは今抱えている問題を、もしかしたらその人物なら救えるのではないか?と思ったのだった。
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