乙女ゲーム的展開はお断り!私は通行人Aなのに自称悪役令嬢の推しに溺愛されてしまった所為で勘違いされて困っています!

ユウ

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第一章伯爵家の見習い料理人

6新しい仕事

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伯爵家の使用人はリーシェが平民でも差別する事無く可愛がっていた。
年配が大こともあり働き者で率先して肉体労働をするリーシェがいてくれて大助かりだった。


「リーシェ、さっきから何を煮込んでいるんだ」

「はい、野菜と鶏肉を」


長時間野菜を煮込んでばかりいるリーシェに声をかけたのは料理長のジャンだった。


「そんなに煮込んだら…え?」

「スープだけ取るんです」

笊に流してスープだけを移すと黄金色に輝くスープが出来上がる。

「なんと透明な…コンソメスープか」

王宮でもコンソメスープは存在するがここまで透き通る事はない。
丁寧にあく抜きをしても、色が濁ってしまうが、リーシェが作ったコンソメスープは顔が映るぐらいに透き通っている。


「美味い…」

「ありがとうございます」


料理人として鍋を振るって五十年。
スープにも自信があったが、リーシェに負けたと思ったジャンは提案をした。


それは――。


「お客様に私が?」

「そうだ。大事なお客様が来週にいらっしゃる。その日にアミューズ・ブッシュを担当して見ないか?」


「え…私がですか」


アミューズ・ブッシュ。
口を楽しませると言う意味合いもあるがフルコースの前菜、スープを用意してメインをより楽しませなくてはならない。


その為センスが必要で、後に出される料理を引き立てる役目も担っている。


「そんな代役を」

「お客様と言っても、お嬢様のお祖父様とお従兄だ」

(いや、まずいだろ)

ヒルデガルドの従兄なら貴族で高位貴族だろう。


「身内だけの席で畏まらない方が良いからな」

「料理長…」

ある意味形式だけの食事会よりもプレッシャーだった。




そしてその当日。



「いらっしゃいませお祖父様、お兄様」

「久しぶりじゃなヒルデ。ますますリシェルに似てますます美人になったのぉ」

「まぁ、お祖父様ったら。孫をナンパしてどうしますの」


パシンと手を叩くヒルデガルドにカミュは真っ青になる。

「これ!伯父上に無礼ではないか」

「良いカミュ。気にするでない…今日は久しくお前とも話したい事がある」

「はい伯父上」


優しい祖父に心なしかヒルデガルドも嬉しそうにし、隣にいる従兄に挨拶をする。

「お兄様、お元気になられて何よりですわ」

「ああ、今日はお招きありがとう」


久しぶりな再会に二人は抱擁を交わし喜び合った。


「ヒルデ、顔色が良くなったね」

「そうかしら?普通ですわ」

「いいや、髪も絹のように艶やかだ」

「お世辞を言っても何もありませんわ」


ツンとした態度であるが、何処か嬉しそうだった。
邸の雰囲気も少し明るくなったと感じながら広間に案内される。


「お待たせしました」


四人そろった所で食事の準備が進められる。

(また冷たい食事か…)


食事が来たことでため息をつく中、最初に出されたのはスープではなかった。



「これはゼリー?」

「コンソメゼリーでございます」


冷めきったスープが出されるかと思えばゼリーのスープが出される。

「どれ…これはなんと上品な味か」

「塩味であるが野菜の旨味に口の中で溶ける快感がたまらない」

「美味しい…」


四人は食べた瞬間、食欲がそそられた。

「このパンは随分小さいわね」

「柔らかいな…それに香りが素晴しい。中にハーブが練りこまれているのか」

「スープの味を殺さず生かすとは…さっきよりもお腹が空いてきましたな」


早く次の料理はまだかと思う中、程よい空腹感の状態で食欲そそる料理が運ばれてい来る。


「鴨肉の赤ワインソースでございます」

「ほぉ、若ワインと…」

「葡萄の香りが素敵」

「うむ、新しい味だが見事だ」

「ええ…」


次々と来る料理に舌鼓を打ちながら一人だけ食事が進んでいない人物がいた。



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