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第一章
1婚約破棄
しおりを挟む南部に位置する温かい気候に恵まれた国。
ミレウス王国は豊かな土地で他国とも活発に貿易をしている国だった。
国が栄えているのはギルドの質の高さと商人の出入りの多さだった。
ただし商人の出入りの多さは時として国の噂が他国に筒抜けという事になるのだ。
他国にも言える事だが、国の内情を他所に漏らさない為にも王宮勤めの文官や女官は徹底しているのだが、人の口に戸は立てられず。
彼等の苦労も知らずに公で身内の恥を晒す馬鹿の所為で、努力は水の泡だった。
先日もこのような馬鹿な真似をした令息がいた。
「リナ!君との婚約を破棄する!君の悪事をここで暴かせてもらう」
公衆の面前で一人の令嬢を吊るし上げる行為。
自分が被害者と言わんばかりに婚約破棄を突きつけ、傍にいる令嬢は涙を浮かべる。
「リナ!どうか自分の罪を認めて…私は貴女を許すわ」
「ルーナ、君は何て優しいんだ」
茶番劇でしかない。
堂々と浮気を宣言して悪いのは貞操を貫いていた婚約者なのに周りは被害者を加害者として糾弾する。
「君は僕の家が貧しい事を利用して婚約を迫った。なんて浅ましいんだ!」
「お金で愛は買えないわ。貴方が今すべきことは一つよ」
貴族の婚約は基本利益の追求。
片方が一方的に悪いわけではないし、親同士が決めた婚約を令嬢に責任があるはずがない。
「ルーナに嫉妬して嫌がらせを行うとは。君のような最低な女は僕に相応しくない」
「フリード!」
誰もが野次を飛ばし、本来ならば非難される加害者を賛同し、被害者となる女性側が悪女となった。
「おめでとう!」
「真実の愛ね!」
「ボロネーゼ家は商人貴族の癖に威張っていて」
「お金で愛を得ようなんて最低ね!」
浮気をして不義を働いた婚約者は真実の愛を貫いた事への賛美と、裏切られた婚約者は金の亡者で人の心さえもお金で全て得ようとしたと罵倒を浴びせた。
しかしそれだけでは済まなかった。
通常婚約破棄をした側は慰謝料が発生するのだが、婚約破棄をした男の親が慰謝料を請求し、共同経営をしていた店の権利までも奪おうとした。
財を失い、社交界でも爪はじきにされ。
外を出れば罵倒を浴びせられながら屈辱を受けたリナ・ボロネーゼ令嬢は商会で自殺を図った。
その所為でボロネーゼ家の評判は更に悪くなり、元婚約者の家には更に問題を起こした事で損害賠償を請求されて全に凝った財産の全てを手放さなくてはならない状況に陥ったのだった。
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