聖女でなくなったので婚約破棄されましたが、幸せになります。

ユウ

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第二章

1第二王子の苦悩

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ジュリエットが国を出てから結界の弱まりと作物が急激に枯れ始めた。
聖花と呼ばれる特別な花は魔を浄化する大事な花でもあったが、誰よりも聖花を育てるのに特化した能力を持つジュリエットが不在の今、どんな大魔導師が聖花を育てても花は育たなかった。

それだけではない。
本当の意味で国民に寄り添っていた彼女を長きにわたり虐げ苦しめたは自分で自分の首を絞めている事に気づかない。



「リアン様、南の結界が崩壊しました」

「そうか…できるだけ避難を急がせてくれて。焼け石に水だろうが」


聖女の結界が日に日に弱まっている事はルーアンから知らされていた。
そもそも強い結界とは昨日今日でどうにかなるものではなかったのだが、聖女だからできるだろう、聖女だからできて当然だと周りは決めていた。


「ジュリエットは無事に隣国に到着したか」

「はい、殿下のレプリカのおかげで」


リアンはオルヴィスの執着心を知っていた。
どんな手を使ってもジュリエットが従順になることはないので嫌がらせをして精神的に追い詰めたところで孤立させ情けをかけて手なずけようと考えていたが、ジュリエットはそこまで弱くなかった。


「彼女は真の強い女性だ。真の聖女としての器を持つ歴代の聖女は殺されても屈服しなかったのだから」

歴史に消される聖女の中には権力者に無理矢理婚姻を迫られたり、体を汚されそうになった者もいる。
だが、真の聖女となった聖女達は屈する事はなかった。


時には不敬罪として死刑になっても最後まで自分の信念を貫いていた。


「真の聖女を汚す事は許さない。これ以上彼女を侮辱する事も」

第二王子として日陰の道を歩きながらも、リアンは国の行く末を案じていた。


「リアン様」

「君にも辛い思いを…」

「いいえ、私は大丈夫です」


妃争いをする二人の聖女に頭を悩ませるリアンはもう一人の被害者を思った。


「君は最後の聖女に選ばれた故に結界魔法はほとんど使えないのに無理を」

「この程度なら問題ありません。ただこれからが問題です」


既に二人の聖女は使い物にならない。
回復魔法は対象は使えるが聖魔法は使えず、女神からも見放された状態では国が崩壊する。


「幸いにもジュリエットが聖石を残してくれていました」


「そうか…」

聖女の力を込めた聖石を使えば最悪の事態を避ける事ができる。


「封印が完全に解かれた時、国に悪魔が降りて来る」

「それだけは塞げなくてはなりません」


過去にも国を脅かした悪魔。
彼等は人の身を得ることで驚異的な力を持って地上を崩壊に導くのだった。


それだけは阻止しなくてはならない。


しかし問題はそう簡単ではなかった。

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