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第一章侯爵令嬢の婚約者(仮)
16無欲故に~レティシアside
しおりを挟むかつて難病と呼ばれた病を治したアレックスは更に我が国が抱える問題を解決した。
それは干ばつに関する問題だった。
昔から精霊に生贄を差し出す習慣が根強かったが、そんなのは大昔の話。
人間が勝手にしているだけのことを王族は未だにありがたがって生贄を差し出していることに私は違和感を覚えた。
生贄にされるのは平民で生後間もなくの赤ん坊。
もしくは年端もいかない少女だった。
なのに王家は国の為に身を差し出すことが最高の栄誉だと言う始末で遺族達に対しても何のフォローもない。
生贄になった子供の親は、悲しみのあまり自殺することがほとんどだった。
このシステムをなくしたい。
そう思って私は生贄に反対をしてきた。
お父様もお母様もあらゆる手段で意味がないことを進言して阻止したが、今度は雨を降らせるために木を伐採するべきだと言い始めた。
その森というのが精霊の森だった。
木を伐採して豪華な神殿を立てれば精霊は喜ぶだろうと思ったのだ。
馬鹿げている。
だけど、専門家は木を伐採したことで大雨が降った領地があるので、有効だと考えたのだけど。
木を伐採した所為で、他の問題が出て来てしまい打つ手がなかった。
そんな時にアレックスが言った言葉に私は目が覚めたのだ。
「森の精霊なんて人間の女の子を貰っても困るぞ。ノームなんか果物を供えたら家を修理してくれたし」
精霊は何時犠牲を差し出せと言った?
そんなことは頼んでいたのか?
私達は思い違いをしていたことに気づいた。
すぐにお父様に相談すると…
「アレクシウスの言葉は最もだ」
「ええ…木を伐採して大雨を降らせた領地は水害に困ってます」
「ああ、大雨は降ったが洪水になって領地は悲惨な目に遭っている」
一部は雨さえ降ればいいと思っているようだけど。
木を伐採してしまったせいで水害を防ぐこともできず、通常森の妖精が守ってくれるはずなのだけど。
伐採した木の中に森の妖精の住処もあったらしい。
彼らの住処を壊した人間に手助けしてくれるはずもないわね。
「アレックスは、木を伐採するのではなく整える方がいいと…また、水の精霊にお供え物をした方がいいとも」
「お供え物か…」
お父様も考え込んでらした。
私達人間は精霊の加護があっても好きに呼び出せるわけじゃない。
精霊側が私達の声にこたえてくれるのだから。
「やってみる価値はあるだろう」
「はい!」
考え込んだ末にお父様はアレックスのアドバイスを受け入れたのだけど。
数日後、とんでもないことが起きた。
「大変だレティー」
「お父様?」
視察先から帰って来たお父様が真っ青な表情をされていた。
「干ばつの領地がオアシスに変わった」
「は?」
「枯れ井戸が水であふれ、十年間雨が降らなかった砂漠の地に雨が!」
「嘘…」
アレックスのアドバイス通りにして三日で、雨は降り出した。
干ばつの影響で湖は枯れていたのにオアシスとなり、井戸は枯れていたのに今では水で溢れているとのことだ。
「アレクシウスのアドバイス通りにしただけだ。後は荒れた木を整え、古い神殿を綺麗に掃除させるように告げた後に祭壇に果物を供えさせた。後は酒を少々…」
「お供えしたんですね」
「ああ、これまでのことを詫びながら祈りを」
お父様、しっかり祈られたのね。
手には聖書を持っていらっしゃるし、真面目に祈ったことが分かるわ。
「何故アレクシウスは知っていたんだ」
精霊とのお付き合いの方法なんて知っている人は聖人か大賢者くらいだわ。
加護なしのアレックスがノームと懇意だったこと。
「通常上位精霊は人前に出ない。ノームと幼少期から懇意だなんてありえないのだ」
「ですが…」
「ああ!アレクシウスが嘘をつくとは思えない」
私達は戸惑いを感じながらも今はまだ様子を見ることにしたが、数日後さらなる問題が発生した。
ジルベール殿下が毒を盛られてしまうという事件が発生したのだった。
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