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閑話1.絡み合う噂
風のように現れ、風のように去って行く二人に誰もが動揺した。
前王妃陛下の第一子であったが為にあまり公には出ていないが、社交界では令嬢達の憧れだった。
誰か構わず愛想を振りまかないが、優秀でつかみどころがない。
若い貴族令嬢は憧れの眼差しで見ながらダンスの相手を望むも、舞踏会では未婚の女性とダンスは踊らない事からエスコートが下手なのだと思われていた。
だが、あの場で噂は全て嘘だと証明されたのだ。
「なんて素敵なのかしら」
「ええ、素敵なダンスでしたわ」
「まるで小説に出てくる運命の赤い糸で結ばれた二人のよう」
ロマンスが大好きな貴族令嬢はここぞとばかり話に盛り上がる。
始めてダンスを踊ったにして二人の呼吸はピッタリで、長年連れ添ったパートナーにも見えるのだ。
「王太子殿下と踊られるダンスも素敵だけど…なんていうか」
「アリスティア様は楽しそうではなかったですし」
「当たり前ではありませんか。王太子殿下を立てていたのですし…けど、今夜のダンスは」
「あのアリスティア様をジークベルト殿下がリードしてましたわ」
淑女の鑑として評価されるアリスティアは常に氷の仮面をかぶり、ダンスの時も隙が無かった。
楽しく踊るということはまずなかったのだが、ジークベルトと踊っていた時は楽しそうに笑っていた。
まるで年相応にも見えたのだ。
「ティエゴ殿下との婚約も政略結婚でしたし。お互いに愛する人を見つけたのですね」
「そうですわね!でも、あのお二人は運命の愛を感じますわ!」
「素敵ね!」
きゃっきゃっとはしゃぐ貴族令嬢達はいなくなった二人の事をここぞとばかり持てはやす。
「兄上…」
しかし置き去りにされて放置されたティエゴは内心で複雑な気持ちでいっぱいだった。
「何故、こんな事を。横から奪うような…」
「ティエゴ様…」
「ごめん、ロゼッタ。大丈夫だよ」
不安げに見つめるロゼッタはの手を握る。
本来ならば今夜の舞踏会の主役であったはずなのに、すっかり蚊帳の外にされている。
引き立て役にされ、傍にいるエドガー・メディスは無表情でありながらも唇を噛みしめていた。
「エド、すまない」
「殿下がお謝りになる必要はございません。あの方にも困ったものです」
いきなり現れ、あんなことを言われ動揺したティエゴは成すすべもなかった。
昔から、世渡り上手で器用だった兄はたいていの事は動じることなく、アクシデントがあっても頭の回転が速かったので上手くやり過ごしていた。
「兄上は一体何を考えておられるんだ…公の場で」
「詳しくは解りませんが、王位を狙う為にアリスティア令嬢を無理矢理婚約者にしようと考えておられるのでは?」
「えっ…」
「アルデンテ侯爵家は貴族の中でも名門です。後ろ盾としては十分ですから…もしくは、侯爵の地位が欲しいが為に彼女を無理矢理…」
「なんて恥知らずな!」
エドガーの言葉に怒りを覚えるティエゴ。
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なのに何故と。
「ティエゴ様…」
「大丈夫だロゼッタ」
「あっ、あの、私は…」
ロゼッタは何かを言いたそうにするも。
「貴女は何も心配ありません。ただ殿下のお傍にいてくだされば、後は私が処理いたしますので」
エドガーが言葉を遮ってしまい、口を開くことが叶わなかった。
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