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166容疑者
しおりを挟むマヤを落ち着かせながらジョイルの回復を待った。
傷の方はそこまで酷くなく脳にも異常は泣きじゃくる見えなかったが、医師から告げられたのは。
「脳に関して問題ありません…ですがジョイル様は高齢で」
「…と申しますと」
「既に持病を患っていらっしゃいましたので」
言いにくそうにする医師に皆痺れを切らしているのを察したのかはっきりと告げられた。
「脳には問題ありませんが神経に異常が…後は右目が」
「それはつまり‥」
「はい、失明です」
「そんな!」
既に高齢であちこち体にガタが来ているのは解っていた。
歩くときは杖を使って歩行しているジョイルは日常生活にはそこまで問題はなかった。
だが今回襲われた所為で右目が見えなくなり、それだけではすまなかった。
「左手の神経にも異常があります。そして膝も…」
「膝?」
「相当痛めつけられたようで…かなり質の悪いやり方です」
高齢者に対してする事ではない。
「許せない…」
「なんて真似を」
犯人の目撃情報はある。
でも決定的な証拠はないので訴えるのは難しい。
「祖父が何をしたというのです。ようやく楽をしてもらえると!」
ずっと苦労していたジョイルを見ていたマヤの気持ちを考えると辛い。
「奥様…」
「もはや一切の情も必要ありませんわ」
何処までも私達を侮辱すれば気が済むのか。
どれだけ私の家族を傷つければ気が済むというの?
「アリア…」
「ジョイルを傷つけたのは私への報復ですわ」
このまま嘆いている時間はないわ。
だけど今は最優先するのはジョイルの治療だわ。
「直ぐに祖母に連絡して治療の相談をします。右目に関しては難しくとも、膝の治療だけでも」
「奥様…祖父は」
「万一足が動かなかったとしてもジョイルは家令です。何も変わりません。必要とあれば看護師、メイドを用意します」
恐らく引退はしないと思う。
だって仕事に生きるジョイルにとって執事の仕事は生き甲斐だと言っていたのだから彼から仕事を奪うなんてできないわ。
「正直私は彼が何処で何をしようとどうでも良いのです」
「奥様…」
「平民になり誰かと所帯を持っても、愛人を囲んでも興味ありませんわ。関わりたくないと思ってました」
完全なる和解も望んでいない。
ちゃんと向き合う?
円満な解決?
そんな綺麗事なんて通じるはずがない。
だから私は徹底的に戦う事にした。
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