ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第一部目覚めた先は巻き戻った世界

2.振り返り

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朝目を覚ますと自分の部屋ではないことに気づいた。


「ここ…何処?」

「お嬢様!お気づきになられたのですね!」

「セレナ」


ベッドから起き上がりキョロキョロと周りを見渡すとここが祖父母の邸だと気づく。


「エステル!!」

「伯母様?」

「ああ、熱が下がったのね?よかったわ」


体調も良くなり三日後、お祖母様は朝から機嫌が良かった。

叔母様もニコニコしていて嫌な予感がしたのだが、既に遅かった。




「お待ちしていましたのよ!じゃあさっそくお願いするわ」

朝早くから来客が訪れたと思えば、お願いとはなんのことかと思ったが、部屋に現れた女性に驚く。


エステルの記憶が正しければ宮廷に出入りを許されている程の有名なデザイナーだ。

「まぁ…なんて美しい御髪でしょう」

「え?」

「美しい白銀の髪に美しい紫の瞳」


老婆姫と呼ばれていたエステルは驚く。

「絹のような美しい髪ですのに…艶がありますわね。あまり弄っておられませんわね」

「はい…」

貴族の令嬢は髪を美しく見せるために染めたり小麦粉を使って固めたりもしているが、逆に髪を痛めてしまうのだが、エステルは殆ど触ってないので艶やかだった。


「今の社交界の髪形は時代遅れですわ…髪をアップにしすぎているのです」

「マダム、可愛くしてくださる?」

「お任せください!」

久しぶりに腕が鳴ると意気込み、髪の毛もアレンジされ美しく着飾られる。


「まぁ!素敵」

「ええ、よくお似合いです」

鏡に映し出されたエステルは別人だった。

(誰?)

自分でも驚きだったが、ふと視線を降ろすと値札を目にする。


絹のドレスは値段が半端ない。


「伯母様…もっと安いので」

「ダメよ。あと10着お願い。すべて絹のドレスにしてくださいな」

ドンっと金貨の入った袋を置く。


「ありがとうございます」

(ひぃぃ!!)

エステルは忘れていた。
アルスター侯爵夫人のヴィオラは自分の資産を持っている。

ヴィオラは女性でありながらも才能にも恵まれており、社交界の婦人の中では資産家だった。

「もう心配する必要はありませんのよ…貴方は私の娘になるのですから」

「え?」

「これからはママと呼ぶのです」

ぎゅっと抱きしめられながら戸惑うが、これは前世にもあったことだ。


両親から酷い仕打ちを受けていて。
見かねた伯父夫婦がエステルを引き取ると言い出したが、それで口論になったのだ。

普通は次女、三女が養女に行くことがあっても長女が行くのはありえない。


世間体を気にしてラウルは猛反対し、最終的にはエステルに決めさせようとしたのだがその視線は断れと言わんばかりに脅しに近かった。

当時幼かったエステルは、理由はなんであれまだ娘だと思ってくれている。


そう思っていたが、勘違いだったと知る。
表向きはエステルを跡継ぎにと思っていたがカルロとヘレンが結ばれれば邪魔者扱いをしたのだから。

(あの時の私はしがみ付いていた)


両親の期待を応えるべくもっと頑張ればいい。

カルロに対してもそうだ。
期待を裏切らないように頑張ればいいと言い聞かせていたが、最初から両親もカルロも自分を見てくれなかった。

カルロは最初から利用していた。


伯爵令嬢であるエステルを。
カルロが愛していたのはヘレンだったのだから婚約者となってもカルロはヘレンを優先させていた。
エステルに対しては社交辞令なの様なものだったが、それでも当初は嬉しかった。

優しい言葉をかけてくれるのが。

(あ…そうだわ)

それは洗脳に近かったし、今なら解る。
エステルはカルロが優しかったのではないと気づいた。


本当に優しいなら、ちゃんと婚約破棄をしてからヘレンと愛を育むべきだ。

ちゃんとケジメをつけるべきだったのに、さも自分は悪くない。
婚約破棄をするのがエステルの為だと言っていたのではないか?と疑念を持ち始めた。


本当に愛情を向けてくれる人の目は違う気がした。


(私が愚かだったのね…)

愛されたいと願うばかりに気づいていなかった。

あの時伯父夫婦の手を取っていれば違う道があったはずだ。

祖父母もちゃんと愛してくれていたのに。
辛くて、苦しくて、寂しいからってちゃんと周りを見なかった。

幼い頃から優しかったのに。

気づけなかった。


「私達には子供がいません。でも私は貴方を娘と思ってますのよ」

「はい…」

ちゃんと振り返れば愛してくれる人はいた。


この日エステルは本当に愛してくれる人を見つけた。

偽りではなく本当の愛を得たのだった。
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