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第二部メトロ学園へ入学
22.攻撃
しおりを挟む翌日、何時ものように校舎に入ると突き刺さるような視線を受けた。
(何?)
普段から友好的な視線を受けることはなかったが、さらに状況が悪化していた。
「何でしょう?」
「昨日よりもなんだか…」
視線が鋭くなっていると感じた。
「なんか様子がおかしくねぇか?」
ユランも不信に思った。
「エステルさん、教室にはいっちゃいかんとね!」
「え?」
サブローが手を掴もうとしたが既に遅かった。
黒板に書かれたのは…
『不正入学をした最低女』
『エステル・アルスターは王都から追い出された女』
『婚約破棄をされた悪女』
黒板に乱暴に書き記された文字に目を見開く。
「何ですかこれ!」
「ひでぇ…」
何時も飄々としているユランですら驚きを隠せなかった。
(ここまでするか!)
いくら何でもやっていいことと悪いことの区別もつかないとは思わなかった。
「誰とね!こんなくだらないことをする奴は」
サブローは黒板の字を消す。
こんな根も葉もない噂を流すような男をとっちめてやりたいと思ったが…
「事実だろ?もうみんな知っているぜ」
「アルスター家の名を汚した令嬢ってな」
「しかも妹の恋人を奪って婚約者になったらしいじゃねぇか。最低だよな」
「まぁ、結局捨てられたって話だから笑えるな!」
傷つくことはない。
それどころか声高らかに言い放つ連中に呆れるのを通り越して尊敬する。
(婚約破棄はでたらめじゃない)
アルスター家の名を汚す振る舞いをしたつもりはない。
「伯爵令嬢とか言っても、この学園も金で物言わせたんだろ!」
「クズだな!」
「しかも侯爵に取り入って養女にしてもらうなんて下衆の極みだぜ!」
罵倒を浴びせるクラスメイト達は許されないことを言う。
「侯爵も頭がおかしいじゃねぇか?」
「こんなのを養女とか!マジ頭いかれているよな!」
「ぎゃはは…」
自分のことは何て言われも構わないが、ロバートとヴィオラのことを言われるのは我慢ならなかったが必死で堪える。
(感情的になってはダメ…)
ここで喧嘩を売ってしまえば同じだと耐え忍ぶ。
「お前等!」
「相手にしなくていいわ」
「いくら何でもこれは…」
全てが嘘というわけじゃない。
婚約破棄をされたことは事実なのだ。
ただどうして婚約者を奪ったと言うことになっているのか。
元々カルロのとの婚約は政略的なモノ。
伯爵令嬢に過ぎなかったエステルがお金を使って婚約者を選ぶなんてことできるはずもない。
(どこかで噂が間違った形で流れている)
噂ではヘレンとカルロは愛し合っているのにエステルがカルロに惚れて親に頼み込みお金で婚約関係に運んだと言うありえない噂が流れている。
(誰よ、こんなくだらない噂を流したのは)
不愉快極まりない噂だった。
どうして自分がこんなことをしなくてはなならいのか。
(ヒューバート…いいえ、違うわね)
普段からエステルを敵視しているヒューバートならやりかねないが…
(彼にそんな頭はないわ)
ここまで噂を流して攻撃する知能はヒューバートにはないと思った。
悪い噂だけを流すのではなく真実も一部だけ流す。
偽りだけでは信憑性に賭けるので真実も流すなんて芸当はヒューバートには無理だった。
(あんな子供じみた嫌がらせしかできない人だもの)
噂を流し精神的に追い込む作戦は知能犯だった。
ヒューバートがこれまでしてきた嫌がらせは陰湿のよう見えるが手の内が解る嫌がらせだったし、自分でしていたのだ。
ただ今回は違う。
(ただの生徒には無理ね)
王都での出来事を知っている人間で尚且つ、ヘレンとカルロの関係性を知っていた人物。
(新入生では無理だわ…生徒でもそれなりの身分の人)
思考を巡らせ犯人が誰なのか考える。
エステルに恨みを持っている人間を特定しようとしたが、直ぐに断念する。
(クラスメイトのほとんどが敵だったわ)
今更だった。
騎士科のほとんどはエステルを妬み恨んでいるのだから誰かなんて特定できない。
上級生もエステルを生意気だと思っている人間は少なくないだろうが、知らない人間まで目を配るなんてことはできない。
(貴族にも恨まれていたしね)
ロバートは侯爵の地位を得ていながら近衛騎士団長でもあるので妬まれている。
あげくアルスター家当主の地位を約束されているのだから、貴族から恨みを買われていても仕方ない。
(教員の可能性もあるってことかしら…)
少しだけ残念に思う。
実力主義のメトロ学園でも色眼鏡で見るような教師もいるのだと。
(とりあえず犯人を見つけないと)
噂が飛躍し過ぎる前に止めなくてはと思うエステルだった。
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