ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第三部騎士科の道

22.聖女の絵

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王都にはいくつかの貴族院があり、その中でも王族も在学したと言われる名門貴族院。

地方のメトロ学園同様に、生徒の自主性や個性を伸ばすべく行事ごとは生徒に任せている。

月に一度は展示会を行い、優秀な生徒は作品を展示することになっている。


アルカディア王国は音楽の国であるが芸術にも力を入れており、特に貴族の令嬢たるもの美的センスも問われるので大事なイベントの一つだった。


その展示会には特別科の生徒が作品を出展しているのだが、今回の展示会は特別科全員が出展することを許されていたのだが…



「まぁ、エレニー様の作品ですわ」

「なんて美しい絵なのでしょう」


月に一度の展示会が行われ一番中央の場所に置かれている聖女の絵に人が集まる。


「なんてお優しい表情…」

「でも、どなたかに似ていませんか?」


神話に出て来る聖女の絵だったが一部の貴族はどこかで見たことがあるようだった。


「これは…」

「王太子殿下!」

その絵を見に来たエドワードに人々は道を譲る。


「なんて美しい絵なのだろうか」

「王太子殿下!」


エレニーは直ぐに膝をつく。


「これほど美しい聖女の絵を僕は初めて見ました」

「もったいなきお言葉でございます」


雲の上の存在の王太子に賛美の言葉を貰い強縮する。


「モデルはいるのですか?」

「えっ…」


「知っている女性に似ている…とっても」

白銀の髪に深く穏やかで優しい青紫の瞳はある人物を思い出させる。


「恐れながら…」

「教えていただけませんか?」

「はい…エステル・アルスター様をモデルにさせていただきました」

恥ずかしそうにしながらもはっきりと答える。


「やっぱりそうですか」

とても似ていると思ったので納得した。


「聖女エルキネスは地上で最も美しい少女と言われております。ミューズの加護を持つ聖女であったと伝えられています」


「はい、聖女でありながら剣を取り戦った救世主メサイアと語られております」

かつてアルカディアが闇に飲まれ廃墟となりかけた時、聖女は女神、ミューズの加護を得てこの世界を救うべく聖剣を手に取り戦ったと言われている。


「この世で最も美しい女性…それは外見ではありません」

「はい…私は…その」


恥ずかしそうに口ごもるエレニーの表情を見てエドワードは察した。


「憧れているのですね?彼女に」

「はっ…はい」


女性が女性に憧れるなんてはしたないと咎められるかもしれない。
もしかしたらそういう趣味があると思われるかもしれないと怯えていたのだが、エドワードは柔らかく笑う。


「私も彼女に憧れていますから」

「王太子様がですか?」

「ええ、彼女は誠に美しい女性です。外見は勿論、心が…」

恋いと言うには余りにも幼過ぎて穏やかな感情だったので憧れだと理解した。


「はい…母が亡くなった時あの方は唯一心配りをしてくださって…バイオリンを弾いてくださったのです」

「そうでしたか」

エステルらしいと思った。
エレニーの母親は辺境伯爵夫人でサイレス伯爵の遠縁で、音楽が大好きだった。

エステルはせめて彼女の大好きな音楽で心を和ませてほしいと思ったのだろう。


「母を亡くして泣いている私を抱きしめてくださいました…泣いてもいいのだと」

貴族の令嬢たるもの、身内が死んだからといって泣くことは許されなかったがエステルはいいのだと頭を撫でて抱きしめてくれた。


「あの時私はエステル様が聖女様に見えてしまって」

「解りますよ。僕にとっても彼女は天使でした」


音楽の祝福を受けた天使だと今でも思っている。
騎士になる為に地方の学校に行き、騎士として戻り心身ともにエドワードを守る剣となることを誓って王都を去った。


その誓いを今でも覚えている。


「彼女は聖女エルキネス様のようです…本当に」

聖女でありながら剣を取り戦った少女とエステルはどことなく似ているような気がした。




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