ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第四部帰省とお家事情

10.悪人撃退

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エステルの装いはまさしく男装の麗人という言葉がぴったりだった。


「私危ない扉が開きそうです!!」


「ちょっと!危険な発言してんじゃないわよ…アンタもバージョンアップしてんじゃないわよ!」


騎士科時の装いは本当にラフな格好で、白い半そでのシャツとパンツスタイルというシンプルなものだったが、今着ている装いは全体を赤で統一させ黒のラインが入り、ブーツとベルトは黒だった。

髪型は学園同様ポニーテイルだったが、とても似合っており。
どこからどう見ても女性騎士に見えるのでアリスはポーっと見惚れる。


「はぁー素敵」


「しっかりしろアリス!!相手は女だ!エステルだぞ!!」

「いいかも」

「見た目に騙されるな!!」

ガクガクと揺らしながら正気にになれと言うが、無理だった。


「もういいわ。馬鹿なことをしていないで行くわよ」

「つーか、お前は女の恰好だしよ」

スカートではないが男性的な装いとは言い難い恰好だった。


「当然よ乙女だもの」


「もういい」


馬車に乗って邸を出て行き、向かう先はサンマルク大聖堂だった。



「新しい絵が飾られているのは御存じですね」

「はい聖女様の絵ですよね」

「ええ、その絵を見てもらいたいのです」

念押しするように言うガブリエルに戸惑う。


「さぁ着きましたよ」

「サンマルク聖堂を見れるなんて感激です」

「ルーク、お前そんなに行きたかったのか」

学園にいた時からサンマルク聖堂の聖女の絵を見たいと言っていたルークは楽しみで仕方なく、アリスも同じだった。

馬車がサンマルク聖堂前に到着し、全員馬車から降りていく。


「何故か、視線が気になるのですが」

「おう」


「私も」

「一点を見つめてるな」


ミシェル以外は通行人が一点を見つめている方を見る。


「エステルのこと見てねぇ?」

「気のせいですわ」


「でも、エステルさんの方をじっと…」


「ですから気のせいだと…」


何度も否定をするのだが、入り口に入ると一斉に見られる。


(なんなの?)

ジロジロと見られるも蔑むような視線ではない。
どちらかというと憧憬の視線に似ているような気がした。



「見て…聖女様よ」


「本当だわ…」

すれ違う人がこっそり呟く。
その意味を理解していないエステルはそのまま入ろうとしたが‥‥



「やめてください!!」


庭園の方から声が聞こえた。


(何?)


エステルはすぐに立ち止まる。


「おーいエステルどうしたんだよ」

「どうしたのですエステル?」


ユランとガブリエルが尋ねるも、直ぐにその場を離れる。


「申し訳ありません。先に行ってください」


「おい!」


確かに聞こえた。
空耳ならばいいが、もし違っていたらと思い、急いで声がした方に向かう。



「離してください!」


「いいだろ…ちょっとだけ」

人気のない裏庭で男が嫌がる少女を無理矢理馬車に連れ込もうとしている。


(なんて罰当たりな!)


仮にも大聖堂の前で狼藉を働くなんて言語道断だった。


エステルは地面を勢いよく蹴り上げ間に割って入る。



そして…


「今すぐその手を離せ」

「なっ!!」

剣先を突き立てる。

「ここを何処だと解っての狼藉か。今すぐ痛い目に合いたくないなら離せ」

「ひっ…」

首に剣先を突き立てられ怯える男は手を上げる。

「サンマルク大聖堂は聖女様のおひざ元、ここで女性に乱暴など許されない」

「乱暴って…大袈裟な!」

「ならば弁明はあちらでされたらどうだ?」

視線を向けると警備が現われる。


「この男が彼女に不埒な行為をしておりました」

「ご協力感謝しま…聖女様?」

騒ぎを聞きつけた門番や警備の人間はポカーンと口をあけた。


(さっきからなんなの?)


すれ違う人にも同じことを言われたのだが、何故他の人達は聖女と呼ぶのだろうか。

疑問を抱く中か細い声が聞こえた。


「エステル様?」

「はい?」

振り返るとさっきまで乱暴されていた令嬢が驚いた表情をしている。


「エステル様!私をお忘れですか!!」

「え?」


慌てながらも問いかける。


その声に姿を見て…


「エレニー様?」

「やはりエステル様でございますね!!お懐かしゅうございます!!」


令嬢、エレニーはエステルに会えたことに大喜びだった。


「エレニー様!!」

「ご無事ですか!!」


貴族院の友人達が急いで駆け寄って来た。

「貴方が連れ去れそうになっていると聞いて…エステル様?」


「まぁ!なんてことですの!」

エレニーと同じく特別科に在籍している二人の令嬢。

リズベット・リュミエール公爵令嬢とローニャ・メサイヤ伯爵令嬢。
二人共貴族の中でも名門貴族で共に父親が大臣を務めている家柄で彼女達も大変優秀だった。


「ごきげんよう」


「「ごきげんよう」」

礼儀としてエステルから挨拶をして声をかける。
身分から言えばエステルの方が上なので先に挨拶をする。


「お帰りになっていたのですね」

「ええ夏休みですので」

「お会いできてうれしく思います。エレニー様をお救い下さりありがとうございます」

もしエステルが無かったらと思うと二人はぞっとする。


「いいえ、人として当然のことをしたまでです」

お礼を言われるようなことをしたつもりがないエステルはクールに言い放つも、二人は頬を染める。


「今後は警備体制を見直すように伝えましょう。エレニー様大丈夫ですか」

「はっ…はい」

「恐ろしい目に合ったのですから当然です。お手を」

未だに震えているエレニーに手を差し出す振る舞いはまさしく騎士そのもので…



「「キャー!!」」

リズベットとローニャは黄色い悲鳴を上げていた。



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