ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第四部帰省とお家事情

25.拘り

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エステルは他人の趣味をどうこう言うつもりはない。
人それぞれ違うのだから好きな物も違って当然で考え方も人それぞれだと学んだ。


ただし、行き過ぎはどうかと思った。


「うむ、新鮮で色合いも実に見事ながら香りも実にいい。飲みう前にふわりと香る甘さと口に入れた瞬間の舌触りと飲み込んだ後の爽やかな味わいが…」

「ちょっと、いい加減にしなさいよ!」

バァン!

ミシェルは耐え切れなくなりテーブルを叩く。
これ以上ヒューバートの食レポを聞いているのは堪えられないからだ。


「アンタのミルクレポはいらないのよ。チビチビのんでんじゃないわよ。鬱陶しい」

「貴様、ミルクに失礼だろうが」

「アンタの方が失礼よ。ぬるくなるでしょ!」

「温度は問題ない。マイコップは一定の温度を保てるからな」


銀色のコップを差し出すと若干冷気が漂っている。


「家宝だ」


「これが家宝…」


とても高価なコップだが中央には可愛らしい牛の絵が刻まれている。


「エステート家の家紋だ。美しかろう?」

(((牛かよ!!)))


貴族の家紋は動物や花がモチーフにされていることが多い。


アルスター家はペガサスが紋章となり、ルークの実家は不死鳥が紋章となる。


王族は獅子となり決められている。


ただしエステート家の紋章は牛。
しかも可愛らしい小さな牛であることから厳格さは感じられない。


「これどう見ても仔牛だな」

「白と黒の模様が可愛らしいですね」

ユランはコップを見ながら再度確認するが仔牛だった。

アリスも何度も見るがやはり可愛い仔牛でしかなかった。

「彼はよく騎士科に受かりましたね」

「まぐれと」

ジークフリートは最大の謎だと思い、サブローはまぐれではないかと疑いの目を持ってしまう。


「はい…僕も少し」

ルークもヒューバートが受かったのが不思議でならない。


「貴様等、聞いているのか!」

「はいはい、聞いているわよ。それを飲んだら牛さんと戯れてきたらどう?」

「牛様は昼寝の時間だ」

「昼寝の時間まで把握しているんじゃないわよ!本当に馬鹿じゃないの!」


嫌味を言ったつもりなのだがヒューバートは解ってないかった。

「懐中時計まで牛なのね」

エステルは一瞬も逃さず見てしまった。
ヒューバートが愛用している銀色の懐中時計には牛の絵が刻まれていることに。


(どれだけ好きなのかしら)


牛が好きというよりも聖女を崇拝し過ぎているからなのだが。


「本当にウザいわ。もう、いい加減私達を解放しなさいよ!」

全くその通りだった。
早くこのくだらないやり取りを終えてゆっくり過ごしたいと思ったのに、悲劇は続くことになるのをエステルは知らなかった。


彼も一応貴族。
貴族となれば絶対に出なくてはならない社交の場に彼がいないはずもなかった。


その日の夜再びヒューバートと遭遇するとも知らずにいた。
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