ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第四部帰省とお家事情

61.罪の重さ



ここまでの騒動を起こしたのに関わらず、他の貴族達は特に何か騒ぎたてることはなかった。

それもそのはずだ。
アルスター家は大貴族中の大貴族で、現在は王族からの信頼も強い。


両陛下の信頼を置かれているので悪い噂を流そうものなら、地獄に叩き落されることを解ってて言えるはずもない。

既にヘレンの取り巻きだった貴族の令息も距離を置いている。


所詮はわが身が大事な貴族なので、自分の身を危険に冒してまで助けようとはしない。

ましてやジュリエッタは正式な貴族ではないと解れば世間の風当たりは悪いのでその娘にと懇意になっても百害あって一利なしだった。


とは言え一部では罪が軽すぎると不満を零す者もいた。

「エステル様は優しすぎです」

「アリス?」

その一人がアリスだった。
先程までのやり取りに口を挟まなかったが内心では怒っていた。

サブローも同様にだ。


甘しゅぎるとあますぎるぞ!」


「そうですよ!ただ領地を召し上げて地方に飛ばすだけなんて!」

ルークも同感だと言わんばかりだった。
事情の知らない人間からすれば誘拐、殺人未遂、精神的暴力に虐待と数えればキリがない程罪を重ねているので甘すぎると思ったが…


「アンタ達馬鹿ね?」

「なん?」

「伯爵家が男爵に降下されるってことは没落するも同然よ?」

「それがなんです?」


三人にミシェルが呆れながら告げるもイマイチ解っていない。

「ラサール領地は東北の中でも厳しい土地で貧しいのよ…そんな土地で温室育ちの貴族が生きていけるわけないじゃない」

「両家からの支援は一切ないし、頼れる人間はいないからな」

東北の中でも最も貧しい領地ラサールは不作続きで、食べて行くだけでも精いっぱいだった。

主に地方出身者の貴族は貴族とは名ばかりで貧しい。
その為これまで散々地方出身の貴族を馬鹿にして貶していたが、立場が逆転したのだ。

「使用人だって侍女なんて雇えないでしょうけど」

「今まで他人にしてもらったことを自分でしないと駄目だからな…領地では他の貴族に後ろ指さされるだろう」

ミシェルは救済処置と言いながらも下した決断は地獄以外の何者でもないと思った。

クロードに至っては妥当と思ったので同情の余地など無い。


「でも、必死に働けば食べていくことは出来ます」

「アリスさん、頭が空っぽの彼等にそんなことできるわけないでしょう」

「お前、えげつないな」

眼鏡を拭き直しながらクールに言い放つジークフリートにユランは少しだけ怯える。


「この程度の罪甘すぎですね。僕ならば鉱山行きを命じます」

「ある意味死んだ方がマシだろ」

「ええ、死ねば良かった思う程に追い込まなくては…見せしめになりますでしょう?」

鉱山行きとは魔石や宝石が取れる鉱山で眠る以外は重労働をさせられる一番辛い仕事だった。

死ぬまで鉱山に留まり作業をしなくてはならないのだ。


「お前、悪魔だろ」

「失敬ですね、世の中のゴミは排除すべきだと言ったまでです」

「ゴミ…」

ジークフリートの容赦のなさにエステルは何も言えなかった。
幼少期から酷いことをされているが、一度だって憎みを感じたことはなかった。


「彼等は今後社交界に出ることは許されない、厳しい監視がつくからな」

「ラサールにて厳しい監視がつくでしょうし…逃げ出したとしても彼等が生きていくほど世間は甘くありませんから」


無表情に言い放つアルフォード。

終始笑みを浮かべるアクセレイと対照的だった。


「終わりよければすべて良しじゃ!」

「何がいいのモノか!お前はシナリオを無視しおって!!」

「まぁ、無事に終わったんだ!あんまり細かいと少ない髪も抜けるぜ?ロド!」

離れた場所ではお長寿組が何やら話している。


(シナリオ…)

内容を聞いてさらに眩暈がする。
今回の出来事はあらかじめ決められていたのだと知る。


「フフッ、まだまだ甘いですわね」

「お祖母様」

仕掛け人は言うまでお無くガブリエルだというのは笑顔を見れば安易に想像がついた。





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