ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第五部見習い騎士

17.役立つ経験

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見習い騎士として覚えるのは目が回る程多く、雑用も多かった。


普段の勤務は主に事務作業だが、騎士に関係ない雑用だったからだ。

普通は嫌気がさしてしまうだろうが、メトロ学園で扱かれ、陰湿な嫌がらせを受けたエステルはスキルを磨き上げた。


「会計報告の書類を」

「どうぞ」

「ああ、そうだ…今度の軍事会議のリストを」

「年度別に纏めております」

「ああ…」



地味な作業は得意になっており、生徒会役員でも山のように書類を扱って来たのでややこしい書類を整理するなど動作もない。


「そろそろ休憩に」

「お茶の用意はできております」

「「早っ!!」」

両手に本を抱えているセスとエーファも開いた口が塞がらなかった。


「アルスター卿、君は随分と察しが言いな」

「慣れておりますので」

(慣れている?)

雑用が慣れ過ぎているのも色々問題ではないのかと心配していしまう。


「ああ、エステル様は学園で書類の整理を押し付けられていたんですね」

「はぁ?虐めってこと」

「一部の馬鹿な僻みだ。身分、実力とも完璧だと妬むんだ」


エーファはセスの言葉を聞いて激怒するも、当の本人はケロッとしている。


「でも、役に立ちました」

「そうだな。何事も経験して無駄なことはない」

フリージア公爵が豪快に笑いながら告げる。

「しかしロバートは掃除が苦手だったのだがな」

「父が…ですか?」

「私と彼は同期でね?掃除が苦手で、書類整理も嫌いでよくドジをしていたものだ」

意外な事を聞いて驚く。

「お茶も不味くて上官に怒られていた」

過去を覆い出しながら紅茶を楽しむ。

「ロバートが入れたお茶は魔茶と言われていた程だ」


「「「魔茶…」」」


どんな茶なのか三人は真っ青な表情をする。

(お父様…)

今でこそ何でもできる自慢の父であるが、邸でお茶を淹れている姿所か台所に入っているのを見たことはない。

基本、貴族で男性が台所に立つことも少ないので当然と言えば当然だが。


(もしかしてお母様が出入り禁止に?)

ロバートならば必要に迫られればお茶を淹れるぐらいやりかねない。


「会計報告も随分と見やすいね」


「本当だ、解りやすい」

「これならすぐ確認ができますね」


エーファとセスも会計報告を見るとちゃんと表になっており重要な部分には色分けされており解りやすかった。


「今年は随分と優秀な見習いが来てくれたものだ…お前達もうかうかしてられないぞ」

「そうですね…」

「じゃあ、書類はお姫様にお任せします!」


セスの言葉を遮り普通に自分の仕事を任せようとするエーファだったが、拳骨が落ちる。


「いっ!!」


「お前はプライドがないのか!後輩に仕事を任せるな!」

「私がやるよりもずっといいじゃない!字だって汚いし」

「威張るな!」


容量が良くてちゃっかりしたエーファは何処までもぶれないが生真面目なセスは仕事を他人に押し付ける行為など論外だった。



「あの、ポワゾン卿、どうか私の事はエステルとお呼びください。私は貴方様に教えを乞う立場です」

「あー硬い!エーファで良いよ!私もエステルって呼ぶから!!」


「この馬鹿女…」

遠慮の欠片もないエーファにセスはもう一度殴ってやろうかと思うが必死に耐える。


「セス先輩…」

「レディー…いいえ、エステルさん。あまり調子に乗らせないでください」


「はっ…はい」


初日で二人の関係性が嫌と言う程解った気がして少しだけ憐れみの視線を送った。





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