ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第五部見習い騎士

24.まな板の鯉

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結局あの後クロードに翻弄された続け、現在は力尽きていた。


「クロード様」

「何だ」

「いい加減に私を下ろしてください!!」


だからと言ってされるがままというわけではない、残った体力は雀の涙ほどであるが、抵抗をしていた。


「私を膝から降ろしてください。そして抱きしめないでください」

「却下」

「変態!!腹黒!」

膝の上に乗せられ騒ぐエステルだったが、この状況を楽しんでいる。


「しかも、あんなことをするなんて!」

「ちゃんと許可は貰った」

「嘘をおっしゃらないでください」


いきなりキスをしてその後された行為を思い出すとさらに体が火照り、未だに熱は残っている。


(あんな…あんなことを!)


常にクールにしていようがまだ15歳の少女であり。
男性経験はまったくない初心な貴族のお嬢様には刺激が強すぎた。


「くくっ…」

「何を笑っているんです!」


本気で怒っているのにクロードはご満悦気味だ。
さっきから終始笑っていて、さらにエステルを怒らせる。


「そのドレスサイズがピッタリで良かったよ」

「はい?」

「まぁ、俺が見立てたんだから当然だな」

「え?」


エステルが今着ているドレスを指さす。

「何を呆けているんだ?ヴィオラ様から聞いていないのか?これは俺からお前への土産だ」


しばらく思考が止まっていた。


(お母様ぁぁぁ!!)

全ては騙されたことに気づく。


「じゃあ、何です?クロード様は本日お母様に呼ばれて?」

「ああ、お茶会に呼ばれたんだ。それから贈り物があるとかで…まさかエステルとはな」

(贈り物!!)

人を何だと思っているのか。
ずっと笑顔だったヴィオラを思い出し怒りを覚える。


「じゃあ、婚約者というのは嘘ですか」

「いや、本当だ」


クロードはエステルをソファーに座らせ、床に膝をつく。


「エステル・アルスター令嬢。クロード・モントワールのは貴方を妻に娶りたく、この場で婚約を申し込ませていただきたい」


(はい?)


そっと胸から取り出したのは深紅の薔薇だった。
男性が愛の告白をする時に差し出す花とされている古式昔の伝統的な儀式。

貴族間では政略結婚が常のご時世では滅多にない作法だが、独身女性の憧れだった。


「何を…」

「この薔薇に誓い、貴方に私の一輪の花になっていただきたい」

「えっ…は?」


さらなる混乱を招く事態となりエステルは迷走してしまった。


(これは、どういうこと?)


ヴィオラに嵌められたと思いきや、婚約者と会うのは本当で、しかもその相手はクロード。


「俺の妃になってください」

狼狽えるエステルは何と言えばいいか解らない。
既に頭の中はパンク寸前にもかかわらず、クロードはエステルの手の甲にキスを送る。


「ひゃっ…」

逃がすまいと何度も手にキスをされてしまいさらに気恥ずかしさがこみあげて行く。

(どうなっているのこれは!!)


どうしようもなくドキドキが止まらず、何を言えばいいか言葉が出てこないエステルはクロードに翻弄され続けるのだった。


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