ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第七部可憐な皇女と聖騎士

21.塩対応の侍従

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その頃、クロードは激務に追われながらも張り合いの無い日々を過ごしていた。


「暇だ…」

「では、追加をお願いします」

「は?」


ドンっと、置かれた書類の山。
さっきから書類作業ばかりしているクロードはそろそろ限界を感じていた。


「おい、今日のノルマは終わったんじゃないのか」

「いいえ、まだございます」

ズラリと並ぶ書類の山を見せられ目が痛くなる。


「殿下には片付けなくてはならない仕事が山のように…後こちらも」

「今度は何だよ」

まだ書類があるのか?と文句を言おうとするも。

見せられたのは釣書と写真だった。


「おい、これは見合い話じゃねぇか」

「左様でございます」

「左様じゃないだろ!何で俺に見合い話が来てんだよ!」

八つ当たりのように叫ぶクロード。
既に婚約者がいるのに何で見合いをしなくてはいけないのか。

「ですが、アルスター家の姫君とは正式な婚約をしたわけではございません」

「は?何を…」

「正確には父君には一切話をされておりません故に…ロバート殿がよい御令嬢の見合いを見繕ってきてくださいました」

「何だと!」


国王の許可も貰った。
ガブリエルにも渋々許可はもらい王妃もモントワール侯爵夫人も乗り気で障害は乗り越えたと思っていたが、大事な事を忘れていた。


「くっ…最後のラスボスを忘れていたぜ」

「肝心なところで甘いですね」


「嫌味を言うんじゃねぇよ!」

イライラしながらもペンを動かし書類を片付けるあたり優秀だった。


「ここまで来て反対なんてないだろ」

「甘いです。生クリームにカラメルソースとチョコをかけるよりも甘いですよ」

「そこまで言うか!」

遠慮のない侍従に突込みをいれながらも聞く。
孫もいる年齢ながら侍従の年齢はまだ四十過ぎだった。

「私が父親ならばなんとしても反対しますね」

「俺じゃ不服だってか?」

「どんな男でも父親にとっては娘を奪う男は敵です」

(そこまで言うか!)


ある意味、母親や祖母の方が優しかった。
ヴィオラは元よりクロードに対して寛大だったし、ガブリエルも条件をクリアできれば婚約を認めると言ってくれた。


逆に言えばクロードのことを認めてくれているのだが、幼少期からエステルにちょっかいを出す男は敵と視なされ、クロードもチェックされていた。


「ご愁傷様です殿下。閣下が帰還されれば確実に殺されます」

「殺されるってなんだよ!」

さらりと言ってのける侍従に突っ込んだ。

「純情可憐な愛娘をにゃんにゃんしたなんて知れば当然でしょう?」

「だからにゃんにゃんっていつの時代だよ!」

それ以前にすべて情報が筒抜けであることが問題だったが、この侍従はモントワール侯爵夫人が送った者なので常識の範囲内で考えるだけ時間の無駄だった。


「私ならすぐの相手を殺しに行くでしょうね」

「くっ…ロバートならやりかねん」

常に娘命のロバートが真実を知ればすぐに怒り狂うだろう。


「まぁ、遅かれ早かれ串刺しにされるのですから」

「おかしいだろ!少しはフォローしろよ」

「非力な私に無理です」

どの口が言うのか、王宮で数十年生きて来たこの侍従は力こそないが頭が回る為現在も生きているのだ。



「まぁ、文官の報せでは三日後には帰還されますので」


「俺の余命は三日といいたげだな」

「ええ、ですから今のうちに仕事を片付けてください」


何処までも塩対応の侍従に解雇を言い渡したい所だが質が悪いことに彼が有能で国王も気に入っていることから簡単に解雇できなかった。


今のクロードにできることは、ロバートに殺されないようにする方法と、机の上に置かれた書類を片付けることだった。

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