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第八話父と娘、愛の死闘
29.社交界の憧れ
しおりを挟む前代未聞の親子同士の私闘を繰り広げたものの、エステルのへの批判は思ったよりも少なかった。
それどころか中立の貴族や他国の貴賓からは憧憬の視線を向けていた。
「見て、白薔薇様よ」
「なんて凛々しいのかしら」
特に女性から人気は鰻登りだった。
「愛の為に命がけの死闘をなさったそうですわ」
「婚約者を守る為に戦われるなんて…素敵ね」
男尊女卑が当たり前のご時世で周りの誹謗中傷を覚悟で決闘を挑んだエステルは無謀であると同時に信念を貫いた意志の強い女性に憧れを抱いていた。
「まるで聖女エルキネス様のようですわね」
「ええ!」
下手な男よりも男らしく、不誠実な男が次々と問題を起こしていることも原因の一つだった。
「決闘からさらに悪化しているぞ」
「ええ、そうですね」
「何でだ」
クロードは、エステルがこれ以上モテるなんて我慢ならなかった。
男に惚れられるのは困るが女性なら余計困る。
男なら、権力をチラつかせ、脅すかすれば済む。
女性の場合は、下手に脅したり脅迫するようなことはできない。
あげく、エステルは騎士道を貫いているので見知らぬ令嬢にも親切だった。
困っていれば気さくに声をかけ、王宮内で迷っていれば道案内をしてくれたりして令嬢や侍女達にも人気だった。
「アイツ、男よりも男前だしな」
「一部ですが、学園内でもエステルに好意を持つ生徒はいましたわね」
「全員女子だがな」
「くっ!」
なんてことだろうか。
決闘の所為で、エステルがさらにモテモテになってしまった。
批判的な声もあれど、エステルを好ましく思う声も多々あった。
男性社会に女性が入るのは、男性の何倍も努力が必要で功績も必要だった。
エステルは一切の苦労を口に出さなかったのがさらに素敵だと思われている。
(クソっ!なんて厄介なんだ!)
エステルが評価されるのは嬉しいが、エステルが好かれ過ぎるのは喜べない。
「兄上、本心が駄々洩れですね」
「なっ!エド」
「本当に心が狭すぎます」
冷たい目で軽蔑するエドワードは厳しい言葉を浴びせる。
あまりにも了見が狭すぎると思いながら、エステルの方を見ると三人の令嬢が近づく。
「ごきげんようエステル様!」
「リズベット様」
今日も美しく着飾るリズベットがエステルに声をかける。
「本日の服装は誠に美しいですわ」
「ありがとうございます、リズベット様は今宵も輝いていらしゃいますね」
「まぁ…エステル様ったら」
ポッと頬を染めながら恥じらうリズベットの表情は恋する乙女モードだった。
「ごきげんいかがでしょう、ローニャ様、サティー様」
隣にいる二人にも挨拶をする。
「髪飾りを変えられたのですね」
「まぁ、お気づきに!」
ローニャが普段使っている髪飾りと違う花を使っているのにいち早く気づき賛美する。
「サーシャ様はリボンを変えられたのですね、とってもお似合いです」
「エステル様!」
細やかなお洒落にも気づき、賛美するエステルに三人は黄色い悲鳴をあげる。
男性では一切気づいてくれない細やかな点も気づいてくれるのは女性ならではだろうが、普段の凛々しい姿は女性であることを忘れさせてしまう。
「あれ、アウトだろ」
「どんだけ誑し込む気なのかしら」
完全に二人はエステルに惚れていた。
本人は一切気づかずにいる所が余計に質が悪く感じた一同は、クロードに同情の眼差しを送った。
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