ある公爵令嬢の生涯

ユウ

文字の大きさ
281 / 408
第八話父と娘、愛の死闘

29.社交界の憧れ

しおりを挟む


前代未聞の親子同士の私闘を繰り広げたものの、エステルのへの批判は思ったよりも少なかった。


それどころか中立の貴族や他国の貴賓からは憧憬の視線を向けていた。


「見て、白薔薇様よ」

「なんて凛々しいのかしら」

特に女性から人気は鰻登りだった。

「愛の為に命がけの死闘をなさったそうですわ」

「婚約者を守る為に戦われるなんて…素敵ね」

男尊女卑が当たり前のご時世で周りの誹謗中傷を覚悟で決闘を挑んだエステルは無謀であると同時に信念を貫いた意志の強い女性に憧れを抱いていた。


「まるで聖女エルキネス様のようですわね」

「ええ!」


下手な男よりも男らしく、不誠実な男が次々と問題を起こしていることも原因の一つだった。



「決闘からさらに悪化しているぞ」

「ええ、そうですね」

「何でだ」


クロードは、エステルがこれ以上モテるなんて我慢ならなかった。
男に惚れられるのは困るが女性なら余計困る。

男なら、権力をチラつかせ、脅すかすれば済む。
女性の場合は、下手に脅したり脅迫するようなことはできない。

あげく、エステルは騎士道を貫いているので見知らぬ令嬢にも親切だった。
困っていれば気さくに声をかけ、王宮内で迷っていれば道案内をしてくれたりして令嬢や侍女達にも人気だった。

「アイツ、男よりも男前だしな」

「一部ですが、学園内でもエステルに好意を持つ生徒はいましたわね」

「全員女子だがな」

「くっ!」

なんてことだろうか。
決闘の所為で、エステルがさらにモテモテになってしまった。

批判的な声もあれど、エステルを好ましく思う声も多々あった。

男性社会に女性が入るのは、男性の何倍も努力が必要で功績も必要だった。

エステルは一切の苦労を口に出さなかったのがさらに素敵だと思われている。


(クソっ!なんて厄介なんだ!)


エステルが評価されるのは嬉しいが、エステルが好かれ過ぎるのは喜べない。

「兄上、本心が駄々洩れですね」

「なっ!エド」

「本当に心が狭すぎます」


冷たい目で軽蔑するエドワードは厳しい言葉を浴びせる。
あまりにも了見が狭すぎると思いながら、エステルの方を見ると三人の令嬢が近づく。


「ごきげんようエステル様!」

「リズベット様」

今日も美しく着飾るリズベットがエステルに声をかける。

「本日の服装は誠に美しいですわ」

「ありがとうございます、リズベット様は今宵も輝いていらしゃいますね」

「まぁ…エステル様ったら」

ポッと頬を染めながら恥じらうリズベットの表情は恋する乙女モードだった。


「ごきげんいかがでしょう、ローニャ様、サティー様」

隣にいる二人にも挨拶をする。

「髪飾りを変えられたのですね」

「まぁ、お気づきに!」

ローニャが普段使っている髪飾りと違う花を使っているのにいち早く気づき賛美する。

「サーシャ様はリボンを変えられたのですね、とってもお似合いです」

「エステル様!」

細やかなお洒落にも気づき、賛美するエステルに三人は黄色い悲鳴をあげる。

男性では一切気づいてくれない細やかな点も気づいてくれるのは女性ならではだろうが、普段の凛々しい姿は女性であることを忘れさせてしまう。



「あれ、アウトだろ」

「どんだけ誑し込む気なのかしら」


完全に二人はエステルに惚れていた。
本人は一切気づかずにいる所が余計に質が悪く感じた一同は、クロードに同情の眼差しを送った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています

高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。 そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。 最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。 何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。 優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛

Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。 全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

処理中です...