ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第九章辺境の聖女

5.ブラックリスト

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それぞれ転入生に思う所はあるが、今はそこまで害になっているわけではない。

ただ用心しておくことを考えた。


「その噂の転入生に関しては、しばらく様子を見た方がよさそうね」

「私達からは関わりたくないけど…アリスが問題よね」

世話係を任されているアリスは関わりたくなくても関わらざるを得ない状況だった。


「ですが、アリスは魔法科のエースです。不当な扱いをするのであれば世話係を変更させるべきですわ。彼女は銀ランクです」


「まぁ、そうだけど」

「ならば私から先生に交渉いたします。アリスは生徒会が忙しいので他の方に代わっていただくようにと」

どんな理由があるにしろ、この学園内では決まりがある。
誰もが差別なく勉強でできるシステムになっているが、階級制度はあるのだ。

学園内に在学する間に功績を残しランクを上げれば地位が約束される。
アリスはそれに見合うだけの地位に、努力をしてきたのだから。

その努力を汚すことは許さない。

「公爵家の親族でも、この学園内では意味がないのですから」

「エステル様!!」

アリスは嬉しさのあまり、エステルにしがみつく。


「うーん、ますます男らしさに磨きがかかって来たな」

「王子様みたいですね」

ユランとルークは日ごと夜ごと、文句のつけようのない王子様に成長しつつあるエステルに複雑な心境だった。


「アンタの考えは悪くないわ。でもそれで納得するかしらね」

「もっともな理由をつけてれば断れません。何より先方もアリスを好ましく思っていないのですから」

エステルはこれ以上、例の転入生をアリスに近づけたくなかった。

色々な不安要素が多すぎる。
アリスと転入生を必要以上に関わらせたくない。


(嫌な予感がするわ…)

光の魔力は癒しの魔法。
けれど、この世には断りがあり、恵みと災いはセットだった。

正しく使えば平和に導くことができるが、間違った使い方をすれば破滅に導いてしまう。

(その転入生を詳しく調べなくては…)

もし、その転入生が光の魔力ではなく、危険な魔力を持っていたら。

アリスを邪魔に思っていたなら危険すぎる。

「アリス、しばらく貴方は彼女と接触を控えなさい。それから結界魔法で身を守りなさい」

「えっ…結界?」

アリスの持つ光の魔力は癒しの力だけでなく結界魔法にも優れている。
闇を浄化することに特化しており、攻撃力はそこまでなくとも防御力はかなりのものだった。

「いいですか、貴方は光の魔力を持つ者。その意味を自覚なさい」

「その意味?」

「貴方は誰よりも聖女様に近い存在であるのだから。噂に左右されてはだめ…いいわね」

もしかしたらクラスではアリスを疑いの目で見る生徒も出て来るだろう。

だとしてもアリスこそが本物だと信じていた。

「はい…はい!」

「貴方に落ち度がない以上貴方は私が守りますから、毅然としていなさい」

アリスの出自で卑下し疑いを持つ人間は多い。
だとしても、アリス自信を疑う理由はないし、これまでの功績はアリスの血の滲むような努力を潰すことは許さない。


「ユラン、いいですわね」

「ハァー…」

こうなった以上、ユランは動かざるを得ない。
アリスを守る為に情報を仕入れるために隠密で行動してもらう必要があるからだ。


「私ができるだけ傍にいるわ…でもエステル」

「はい」

「アンタも気を付けるのよ…あの女がこのまま大人しくしているとは思えないもの」

「解っています」


こうして全員で転入生、アリアナを要注意人物とした。



「とは言え、彼女は何が狙いなのかしらね?」

生徒会を出た後ミシェルが呟く。


「え?」

「生徒会室に不法侵入するなんて」

ミシェルは無表情で睨む。

「狙いは人じゃなさそうね。しかもご丁寧に呪詛をしかける道具まで使って」

パリーン!

生徒会室の出入り口にこっそり仕組まれていた香炉を壊す。


「これは…」

「ご丁寧にもエステルの名前まで」

「なっ!」

エステルには言わなかったが、ミシェルはカップを新調しているのに気づいていたし。
カップも特別製なのにも気づいていた。

通常、毒を映す器は銀だが。
あくまで毒を映すだけだったが、先程使われていたのは毒を消す器だった。

茶葉にも毒を消す効果のあるものを使っていたのもお見通しだった。

「あの女出会った時からきな臭かったわ」

「はい」

「とにかく、用心しましょう」


まだ何も解らない状況なので確実な手立てはない。
ならば自己防衛策を考えるのが先だと思ったミシェルは周りに注意をしていた。


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