ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第九章辺境の聖女

12.短絡的な罠

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アリアナとの最悪な出会いを終えて翌日。
科が違い、ランクも違うので必要以上に関わることはないように注意をしても、トラブルは自らやって来た。


移動教室の時の事。


「きゃあああ!」


エステル達が廊下を歩いていたら、アリアナが派手に転び、涙ながらに訴える。

「すいません!」


まるでエステルに怯えるかのように謝るアリアナ。

「すいません」

ビクビクする姿でエステルを見上げる。


今は人通りも多い時間帯で他の科の生徒も見ている。


「エステル、どうした…」

傍にいたユランが近づくと同時に、他の男子生徒の声が聞こえる。


「アリアナ!大丈夫か!」

騎士科の生徒であるが、エステルとはクラスが違う。
ランクも銅クラスでエステルとはほとんど面識がない生徒だった。

一応貴族の末席だったか?ぐらいの認識しかない。

「いえ、私が勝手にこけただけです!エステルさんは何も悪くないんです」

((うわぁー…))

エステルとユランは心の中で思った。

かなり頭の悪い方法を取って来たのだと思い、早速この場から離れたくなった。


他の生徒も冷ややかな目を見ている。


「何あれ…」

「最低」

「ないだろ」


ヒソヒソ聞こえる声に、アリアナの口元は笑っている。

どうやから周りはエステルがアリアナが突き飛ばしたと思い込んでいるようだった。


「アルスター嬢、アリアナを突き飛ばしたな!」

「あら?私は転んだ彼女に駆け寄りましたが」

「嘘をつくな!前から貴方の傲慢な態度は問題視されていた!昨日もアリアナを苛めたと聞いている」


エステルに噛みつく男こと、ラモール・ノックが声を荒げる。


「他にも目撃者がいる」

「フーン」

ユランは、ラモールを見てあきれ果てる。
アリアナは自分から派手に転んでいたし、エステルとの間に距離があるので無理だ。

距離がなくとも不可能な理由もある。


「どうやってしたんだ?」

「そんなもの、突き飛ばして…」

「これでどうやって突き飛ばすのかしら?」

「あっ‥」

現在エステルは両手が塞がり、突き飛ばすのは不可能だった。


「ならば足を引っかけたの決まってる!」

ラモールは手が無理でも足を引っかけたのだと言うが、それも不可能だった。

大荷物を抱えた状態では視界がはっきりしないし、足をひっかけるなんてできない。

それ以前にエステルがそんな真似できないのだから。


「嫌ですわ、そんなはしたない真似を。淑女がスカートを翻すなんて」

「なっ!」

長らく淑女教育を受けて来たエステルが荷物を持ったまま足を引っかける行為をするなんてはしたない行為をるわけがない。


「ふざけるな!現にアリアナは…」

「そこのお嬢さんは自分でこけたって言っていただろ」

「そんなの嘘に‥‥」

「まぁ!」


ユランがラモールに告げた言葉に即座に気づくエステルは声をあげた。


「アリアナさんは嘘をおっしゃっていたのですか」

「聖女であるアリアナは嘘はつかない!」


「じゃあ、事故ですね」


「「は?」」


今度はアリアナとラモールが素っ頓狂な声を上げた。


「聖女候補となるお方はいかなる時も偽りを言葉にいたしませんものね?」

「じゃあ、事故だな」

二人は満面の笑みを浮かべながら去って行く。


(なっ…何なのよ!)

ポツンと取り残された二人は居心地の悪さだけ広がっていた。





「偽聖女さんが頭の緩い方で助かりましたわ」

「お前も酷いよな」

「貴方に言われたくなくてよ」


クスクス笑いながら去って行く二人は全て確信犯だった。
あの場でアリアナがラモールに庇ってもらい、尚且つ悲劇のヒロインを演じながらエステルを悪女に仕立て上げるべく行動していたが、そうは問屋が卸さない。


「彼女はあくまで自分転んだと言ったのですから」

「ああ、聖女は嘘をつかないってのが王道だしな。それに他の生徒はあの二人を冷めた目で見ていたのに気づいていないだろ」


「ええ、気づいていないわね」

アリアナとラモールは勘違いしていたが、第三者はアリアナの行動を批難していただけだった。


「だが油断は禁物だな」

「ええ、しばらくはこちらから仕掛けるべきではないわ」

様子を見て、相手の出方を待つ先方に出ることにした二人は、次の作戦を考えることにした。
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