ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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第九章辺境の聖女

23.平和な日

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次の日、エステルは特に問題もなく平和な日々を過ごしていた。


「静かね」

「そうだな」

何時もならなにかしら騒動が起きるのに何も起きなかった。

それもそのはずだ。
アリアナが学園にいないので何も起きるはずがない。

「あのお嬢さんなら風邪で休みらしい」

「あら、そうなの?」

今日も何かしでかすのだと思って少し身構えていたので表紙抜けだった。

「どうしたのかしら?」

「慣れない生活で疲れが出たらしいぞ」

真実は本人が知る由もない。


(まぁ、嘘じゃねぇしな)


実はユラン、昨日の出来事はすべて計画して行ったことだった。


何時もの時間にヒューバートがあの場所にいるのは解っていた。
アリアナがヒューバートに接触しようとしているのも知っていたのでそれとなく情報を与え蜂合わせるように仕向けたのだ。


祈りの時間を大事にするヒューバートのことだ。
空気を読まず祈りを邪魔すればどうなるか解っていたし、お互いに空気を読まない者同士で相手の話も聞かないので結果見えていた。

しかもヒューバートは聖女エルキネスのこととなれば周りが見えず暴走する。
いくらアリアナでも暴走したヒューバートを止めることはできず自滅してくれると踏んだのだ。


「それよりも、王宮で新たな動きがあった」

「え?」

「貴族派が緊急会議をしている…ネズミが集まってな?」

安堵したのも束の間。
さらなる問題が起きていることに頭を抱える。


「はぁー…」

「まぁ、想定ないだろ」

「大人しくしていないとは思ったけど」

貴族派がこのまま大人しくしているとは思っていなかった。


「ユラン、私が思うに」

「ああ、あのお嬢さんは貴族派の差し金だ」

「ええ」

ただし、貴族派があんな迂闊な令嬢を刺客に送るにはあまりにも雑だと思った。


「何が目的なんだか」

「だよな。お前を失脚させるにしても頭悪そうだし」

貴族派ならばもっと有力な令嬢を送り込むことも可能なのにとも思ったが、考えられるのはアリアナの持つ魅了魔法だろう。

「魅了魔法の効果を期待したのかしら」

「だとしても、無理あるだろ」

魅了魔法は相手の心を完全に支配するのは不可能だった。
麻薬でさえその効果は持続させることは叶わないし、惚れ薬のような効果は一定の期間のみだった。


「優れた魔女は人間を誘惑するのが巧みだが、何も魔法だけじゃないしな」

「ええ、彼女達は魔法だけでなく話術も優れていると聞く」







東の魔女の伝説。
彼女達は強い魔力と同時に美しい容姿に話術を使って人々を虜にする。

ただし博打のように一発勝負ではない。
相手の心に入り込み少しづつ自分に好意を向けさせなくてはならないので時間の根気もいる。


「貴族社会でも一目惚れで恋愛をする人がいるけどすぐ覚めるしね」

「ああ、そうだな…」

恋に恋している恋は直ぐに終わる。
本当の意味で愛を育んでいるならば簡単に壊れることはないのだろうが、洗脳などの愛に意味はない。

「でも一つ疑問があるわ」

「何だよ」


魅了魔法について調べていたエステルはどうしても解らないことがあったのだった。
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