ある公爵令嬢の生涯

ユウ

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閑話エドワードの狂詩曲

2.捨てられた姉

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公の場でエステルに合うことはできず、こっそりと会う日々が続いた。

まるで秘密の友人ができたみたいで嬉しかったエドワードは侍従の目を盗んでは、エステルに会いに行く日が日課となっていた。


だが、数時間、宮廷楽団のメンバーにエステルの姿はなかった。
代わりにバイオリン演奏者となったのは見知らぬ貴族令嬢だったので不審に思った。


「殿下?」

「どうして、メンバーが変更に?」

側にいる侍従に尋ねると言いにくそうにしながらも答えてくれた。

「その…言いにくいのですが」

「はい」

「婚約者が、妹君と婚約をすることになったとかで…外聞が悪いので宮廷楽団を御両親に辞めさせられたと」

「は?」

この時冷水を浴びせられるような感覚だった。


「まぁ、社交界でもヘレン嬢とカルロ様が恋仲なのは有名な話でしたし」

社交界ではよくあることだと解っている。
婚約者がいながら恋人を作るなんてごまんとある話だが、姉の婚約者を奪い、社交界からも姿を出すことを許されないなんてあまりにも理不尽だった。

「姉君は御両親からも疎まれ妹君ばかりを溺愛していたと聞きますし」

「ですが、エステル嬢は跡取りで公爵家を継がれる方と」

「アルスター伯爵は妹君に公爵家を継がせようとしている話も出ていますし…社交界からも冷遇されている彼女に居場所は…その」

侍従は言いにくそうにしているが、その先は言わなくても解る。

(どうして…)


長女でありながら、ここまで酷い仕打ちを受ける理由はなんなのだろうか。

同じようにお腹を痛めて産んだ子供ではないか。


「公爵ご夫妻は高齢です。いつ何が起きるか解りませんし…婚約者を奪われたというレッテルはつき纏うでしょう」

貴族令嬢にとって婚約破棄は死活問題だった。
双方に利益がなく配慮して婚約解消となったのならばまだいいが、社交界では婚約破棄という言葉が飛び通っているならば大問題だった。



「今後、姉君が婚約者を見つけるのは難しいでしょう」

「そうですか」


胸の奥がズキズキして苦しかった。


初めてできた友人。
エドワードはエステルのバイオリンに癒され、心を慰められたのに。


エステルに何もしてやれないのが悔しかった。


(まただ…まだ僕は!)


兄が貴族達に酷い仕打ちを受けていても何もできなかったことを思い出す。

今度は友人が傷つけられているのに、どうしることもできず歯がゆく感じていた。



どうやって声をかけたらいい?
どうやってはげませばいいのか?と考えても答えはでず、そうしている間に成人式を終えることになるのだった。

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