聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ

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139ないものねだり





傷だらけになってもお姉様に手を伸ばそうとするお母様。

ずっと苦しんでいて、後悔の日々を送っていたのだと今ならハッキリわかる・


「サリア!もう…」

「いいえ、これは私の責任です。そしてジャネットの歪みを!」



フラフラになってお姉様に近づくお母様をお父様は止めようとしてもお母様の意思は固かった。


「貴女は一度だって誰かを愛したことはあるの…自分が傷つこうとも守りたいと…」

「馬鹿な事を言わないで!私は誰にも愛されない…愛してくれない」


お姉様は耳を塞ぎお母様の言葉を拒絶する。

聞きたくないんだ。


「それは君が誰も愛そうとしないからだろう」


「殿下!」


別の部屋にいるはずの殿下とマリア様が現れた。


「貴女は、どうしてそうなの」

「何よ…この悪女が!」


「私がいようがいまいが…全部持っていたじゃない」


マリア様の目は悲しそうだった。


「優しい両親に優しい妹…サーシャ様は一度だって貴女を悪くわなかったわ。なのに社交界で貴女は何を言った?」


「マリア様…」


「私は上流階級の事も貴族社会の常識も知らないわ…でも、本当に心配してくれる人の手をはねのけたのは誰?」


「煩い!煩い!アンタに何が解るのよ!全部奪ったくせに…何もかも持っているくせに」


何もかも?

すべて持っている人なんてこの世にいるの?


「お姉様はすべてを手に入れようとしたんですか」

「サーシャ!」


「全部持っている人はこの世にいるのですか」


人が誰もが望むものを持っている殿下。
だけど人が絶対に必要なものを殿下は持っていなかった。


家族との温かい時間。
愛する人と共に過ごす時間。

心の平穏は殿下になかった。


「お姉様は本当に聖女になれば幸せになれると思っているんですか」

「そうよ…聖女になれば」

「歴代の聖女の方々は決して幸福な終わり方じゃなかった…無理やり故郷から引き離されたり時の権力者に排除されたりしているのに」

「私は歴代の聖女とは違う!」


「聖女になることは女性として、人としての幸福はないんですよ」


聖女である以上は、個人の幸福はない。
王太子妃になったとしても同じことだわ。


「国の為に尽くし、個を捨てて生涯聖女として身を捧げることがどれだけ辛いか」


聖女の手記を読んでわずかしか知らないけど聖女は過酷な役目だ。


「ジャネット嬢。聖女は君が思うようないいものじゃない。聖女となれば監視され、政治的に利用される。少しの失敗で排除される。過去の聖女がそうだ」

「私は…じゃあ私は何のために…」


血の涙が流れる。
お姉様の体から瘴気が薄れた。


意識を取り戻した?


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