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第二章新生活
19.ヒーロ登場
しおりを挟む後方から飛んできたのは薔薇だった。
「ふご!」
「コーデリア!」
リーンハルトの口に放り込まれた薔薇は、毒はないが口に入れれば麻痺を起こしてしまう効果がある。
案の定、薔薇を放り込まれ口がヒリヒリして言葉が放てなかった。
「大丈夫か」
「ええ…でも」
ビリビリに裂けたショールに、床に散らばるネックレス。
無理矢理腕を引かれた所為でドレスの袖元が破れており、肩を抱きしめながら怯えた表情をする。
「これを」
アッサムは白衣を脱いで羽織らせる。
「ありがとう…」
「女性にこのような狼藉を働くとはどういうつもりだ。それでも男か?恥知らずな」
アッサムはコーデリアを守るように睨みつけ、言葉が発せないリーンハルトの胸倉を掴んだ。
「何とか言え、だんまりか?」
言わないのではなく言えないのだがアッサムは気づきもしない。
「コーデリア、君はこんな男に付きまとわれていたのか?」
「王都にいた時に…ですが、私はこの方とは関係ありませんわ」
涙を溜めながらコーデリアは訴えた。
リーンハルトと婚約している時も、パーティーで少しでも男性と話せば浮気を疑われ、思い込みで決めつけられていた。
アッサムにも誤解をされたらどうしようと不安がよぎった。
(嫌よ…アッサムに誤解されるなんて!)
リーンハルトと婚約していた頃は誤解を解く努力もしなかった。
どんなに言っても聞く耳を持たないし、無駄だと諦めていたのだから。
「私は…」
「可哀そうに…こんな男に付きまとわれるなんて。君は美しく貞節だからな」
「アッサム」
誤解を解こうとするコーデリアだったが、アッサムは最初から疑いの余地などなかった。
聞くまでもないと言わんばかりの言葉にコーデリアは安堵した。
「信じてくださるの?」
「何を疑うと言うんだ。君に付きまとう男がいても君に問題があるわけがない…どうせこの男は、勝手に君に惚れ、自分に気があると思い込んだんだろう」
「ごぼぉ!」
口が痺れて真面にしゃべれなかったリーンハルトだがようやく口のしびれが収まり、傍に置かれている水を一気飲みして、二人を睨みつける。
「その女は俺の婚約者だった者だ…貴様、無礼だぞ」
「何?」
「いいご身分だな?身分の低い男の前でしおらしい振りをして男を手玉に取っていたのか?あの売女の姉だけあって貴様も同類だったか!」
「止めてください!リリーは貞節を重んじた女性ですわ!」
リーンハルトのあんまりな言いぐさにコーデリアは許せず睨みつけた。
初めてここまで声を荒げたコーデリアに驚くアッサムに周りの招待客も先ほどのやりとりを見て騒めいていた。
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