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第二章新生活
18.初めての抵抗
しおりを挟むリーンハルトに手首を掴まれ、嫌悪感を感じる。
乱暴で強引で、気遣いの欠片なんて一切あるはずもなく。
「俺とやり直そう」
「何を言ってますの!」
「こんなの俺達じゃない。こんな見すぼらしい成金未亡人の邸で、使用人に成り下がるなんて俺じゃない!君だってそんなみすぼらしいドレスに、石ころのようなアクセサリーなんて恥ずかしいだろう」
(なんてことを!)
今身に着けているアクセサリーはイミテーションであるが、リリーが少ない給金で材料をそろえて作った物だ。
ドレスだってコーデリアの為に徹夜で作り、靴もそろえてくれた。
生活は決して裕福ではないが、少しの贅沢はできるのに、貯金をコーデリアの為に使ったのだ。
「このドレスはどんな高価な物より価値があります。このドレスはリリーが私の為に誂えてくれたのです」
「ハッ、センスもかけらもないな…こんなショール」
「何を」
ビリビリ!
「止めて!」
コーデリアからショールを奪いビリビリに引き裂く。
「布も薄いし安っぽい…こんなネックレスも」
ブチっ!
「あっ…」
コーデリアの首にかけているビーズのネックレスを引きちぎり、足で踏みつける。
「石ころでしかないこんな物をつけて喜ぶとは…愚かな」
「酷い…」
例え一級品の真珠ではなくとも、ビーズを集めるのにどれだけのお金が必要だったか。
手を傷だらけにして作ってくれたショールにネックレスが無残な姿になり、コーデリアは傷ついた。
まるでリリーの思いを踏みにじられたかのようだった。
「あんな泥棒猫と君は住む世界が違い過ぎるんだ。君は俺と一緒に貴族に戻るべきだ…君だってあの泥棒猫が憎いだろう?侯爵に戻り、あの女に償いをさせよう」
(償い?何を言っているの?)
まるですべての元凶はリリーだと言わんばかりだった。
「私は今の生活に満足しています」
「何?」
「少なくとも貴方と婚約していた頃は操り人形で耐え忍ぶ日々でした。地獄のような日々を送りながら貴方のご機嫌を取り…屈辱の毎日でした」
「何を…」
どんなに努力しても顧みられることがない日々。
娘を道具としてしか思っていない父親と、義母にどれだけ傷つけられたか。
家族から愛されなかったコーデリアを愛してくれたのは憎いはずの異母姉妹だった。
当初は思う所があったが、リリーは素直で優しい妹だった。
少しばかり元気が良すぎるのは目立つが人の痛みが解る優しい子で、コーデリアを姉として慕ってくれた。
だからこそコーデリアもリリーを恨まずにいることができた。
そして今も、コーデリアを必死で守ってくれた。
そんなリリーをどうして恨めようか。
感謝しかなかったのだから。
「私は侯爵家から出た身です。戻る気はありません。今の生活に満足しています。私は貴方の道具じゃない!」
「なっ…俺に歯向かうのか!」
「私はここで幸せになります。貴方の元に戻るぐらいなら死んだ方がマシよ…この最低ごく潰し男!」
これまで従順だったコーデリアの初めての反抗だった。
これには流石に驚くが、反抗されたことに苛立ちリーンハルトは手を上げようとした。
手首を強くつかみ自分の元に引き寄せ無理矢理連れて行こうとしたのだ。
「嫌…離してぇ!」
「いい加減にしろ!」
力では到底勝てなかったコーデリアは抗うこともできなかった。
その時だった。
「何をしているんだ!」
何かが飛んできた。
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