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第二章新生活
24.マーガレットの鞭
しおりを挟む傍に侍女と護衛を連れて現れたのはマーガレットだった。
「マーガレット夫人!」
「この場は私にお任せくださいませ」
凛とした佇まいで現れたマーガレットに誰もが息を飲んだ。
これまで慈母だと言われて来た彼女の表情はとても険しかったのだから。
しかし、リーンハルトは気づく事もない。
むしろようやく助けに来たかと思っているぐらいだ。
(このデブ夫人が!来るのが遅いではないか!)
助けられて当然と思うリーンハルトはまるで自分の立場を理解していなかった。
「この度は私の使用人が無礼を働いたことを心よりお詫び申し上げます。招待客の皆様にも不愉快な思いをさせてしまった事を誠に申し訳ありません」
(は?)
深々と頭を下げるマーガレットに驚くリーンハルトは意味が解らなかった。
「コーデリアさん、本当に申し訳ございません。このような場でこんな乱暴な…さぞ恐ろしかったでしょうに。さぞ屈辱的だったでしょうに」
涙を浮かべるマーガレットにコーデリアは急いで頭を上げるように告げた。
「頭をお上げくださいませ、マーガレット夫人」
「これのした行いは愚劣で卑怯で人としても男としても最低な行為でございます。淑女の服を破るなど」
(なっ…愚劣で卑怯だと!)
てっきり助けてくれるかと思ったが、そんなはずもなく。
マーガレットはリーンハルトを汚い物を見る様な目で見ていた。
「貴様!成金の分際で!」
「なっ…お前!」
逆上したリーンハルトは暴れ出し、傍にいた護衛達が抑えようとするもマーガレットは扇を鳴らした。
それは必要ないと言う合図だった。
「反省する気はないようですわね…私ももう限界ですわ」
「はい奥様」
どんなに心を尽くしても、言葉を尽くしても意味はなかった。
ならばもう庇う事もしない。
「この愚か者目が!」
「へ?」
即座に取り出したそれでリーンハルトを叩く。
素手で殴られるよりも痛みを感じ、悲鳴にならない声を上げた。
「なんて愚かで厚かましく、節度もない男。情けをかければつけあがるとは…あげくの果てにお客様に婦女暴行未遂を行うなど許されなくてよ」
「あ…がが…」
痛すぎて体全体が麻痺して声が出せなかった。
ただ鞭で殴られただけなのに体が動かないのには理由があった。
「どうですの?毒薔薇で作った鞭の味は?痛いでしょう?」
(毒薔薇だと!)
マーガレットは鞭を構えながら床を弾き、そのまま鞭は舞う様にしてリーンハルトを殴る。
通常は叩くのだが既に殴るような勢いだった。
「私、若い頃は身を守る為にこの鞭を振るいましたのよ?身を守る為にも必要だと夫に結婚指輪代わりにいただきましたの」
「いや、おかしいだろ!何で鞭?」
「アッサム、この世には変わった婚約の仕方があるんだ」
突っ込みを入れるアッサムに肩をポンと叩き生暖かい視線を送るラスティ―は既に経験者故に語った。
マーガレットもまたぶっ飛び過ぎていると。
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