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第一章廃嫡と婚約解消
7母
しおりを挟む母上は俺に抱き着き泣きながら声を上げていた。
「貴方が今までどれだけ頑張っているか母は知っています」
「え?」
「私が腹を痛めて産んだ子でなくとも、我が子同然に育てて来ました。貴方は今も昔も私の自慢の息子です」
俺は前王妃の息子で母は身分が低かった。
対する後妻の義母は王族の血筋を持っており、アルセウスの方が王太子に相応しいと思うのは当然だった。
建国が始まって以来の神童と謳われるアルセウスに対して俺は凡人だ。
今まで王太子でいれたのは俺の実力ではなく、俺の周りの人間が優秀だったからだ。
「母上、私は…」
「ずっと見ていました。フィルが頑張っている事を…しかし私も立場上過度に貴方を庇う事はできませんでしたし私は貴方には王は無理だと思っていました」
「それは…」
俺が出来損ないで血筋も良くないから。
「貴方は優し過ぎた」
「え?」
「王にはあまりにも不釣り合いの心を持っていました。なのに王としての資質は陛下以上にあるので」
「おい!」
「貴方は黙っててください!」
「はい!」
母上が怒鳴ると父上は大人しくなる。
「私は貴方にも怒っているんです。まだ幼いフィルを私から取り上げて…しかもアルセウスばかり可愛がって!」
「しかしだな…後に補佐として」
「貴方が甘やかすからあの子は自分の立場を忘れてつけあがったのです!兄を敬う事無く兄の婚約者と通じるなど。マリアンナ嬢に関しても私は許せません」
「母上、彼女は…」
「確かにフィルのした事は問題ですが…先に貴方の思いを踏みつぶしたのは誰です」
踏みつぶしたって。
そこまで言う必要はないだろ?
「王太子妃に求めるのは優秀さではありません。常に夫の心に寄り添えるかどうか。ある程度の教養は必要ですが」
「だが、既に廃嫡を自ら宣言しては…」
「この程度の事で狼狽えるとは何事です。本当に情けないですわね」
母上酷いな。
俺が言うのも何だが、母上からすればこの世の全ての男が甲斐性無しになるんじゃないか?
マルシェに関してもだが逞し過ぎるだろ。
「これよりフィルベルトに北の辺境伯爵の爵位を与えます」
「え?」
「北の領地は隣国のエリンデール王国のすぐ側です」
ここから北の最果て。
北の領土はランタニア王国の中でも独立している。
今でこそ一つの国となっているが、未だに王族に不満を持つ者が多く。
独立を得ようとする壁に双方を挟まれた領地がエレンフリークと呼ばれる領地だった。
その領地に行くことは袋の中の鼠も同然。
「公爵も、ここまですれば納得するでしょう」
「王妃陛下!あんまりではありませんか」
「宰相、他に方法があって?」
「ですが…」
表向きは俺を追放にして辺境地を収めさせるつもりだ。
出来なければそれまでという事になる。
「北の領地はあらゆる問題を抱えた領地、そこで半年耐えなさい。できるだけ早く迎えに行かせます」
「一か月持った者がいないのですぞ!」
「だからです。いいですね」
これが最大の励ましと情けだ。
俺を守る為に母上はあらゆる手を使ってくれたのだろう。
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