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第二章北方四島の絆
閑話4第二王子の失態②
しおりを挟む先代国王と深い友情で繋がれたルーティン帝国は女性が君主を務めている。
未だに女性が国を治める事に否定的な国は多い中、後ろ盾となっていた。
その恩もあってか現皇帝陛下は先王に礼を尽くし、現王妃陛下のヴェロニカとも良い関係を築いていた。
現皇帝ジューリアは第一皇女が重い病に苦しみ闘病生活を送っている。
優れた女皇帝であっても我が子の身を案じ、苦しんでいたジューリアに対して百合の花を贈るなど侮辱も良い所だ。
「何故こんな真似をした」
「それは、この者が私に言ったのです!」
「何だと…」
「そんな!」
「言い訳をするな!お前が私に進言したのだろう!」
手紙の内容を確認したなかったのはアルセウスだった。
傍にいる官僚はアルセウスに命じられた通り白い百合の花を用意しただけだ。
「貴様は我が国に…この私に泥を塗ったのだ!死んで詫びよ」
「殿下!」
「お前の首一つでは済まぬぞ!どう責任を取るのだ」
全ての責任を新米官僚になすりつける事で責任を逃れようとしたアルセウスは罪悪感の欠片もなかった。
「アルセウスよ」
「国王陛下…」
(そうだ、僕は悪くない…悪いのは無能な奴等だ)
あの時手紙を読まなかったアルセウスは一切悪くない。
すべては古語が読めない官僚が悪い。
万一自分の少しの過失があったとしてもだ。
(変わりはいくらでもいる…この男と家族の首ぐらい安い)
アルセウスは天才であるが、世間知らずだった。
これまでは専門家と渡り合えるだけの能力はあったが、いざ政治に場に入り交渉する時は他の者がしていたから知らなかった。
王族として、王子としての責任を。
命令だけしていればいいなんてことがあるはずがない事を。
(僕はあの腰抜けとは違うんだ!)
王太子でありながらも低姿勢で、大臣からは叱責を受ける情けない兄とは違う。
民を圧倒的な力で従わせるのではなく和解を望むのは腰抜けのする事だと思い込んでいた。
「そうか…良く解った」
「陛下」
「お前は臣下に責任を擦り付けて平然とする人間だったか」
「え?」
てっきり自分にお咎めが一切ないと思ったのだが…
「例え、その者の失態であっても庇う事もしないとは」
「何を!」
「フィルベルトならば真っ先に自分の配慮が足りぬと庇うだろう。上に立つ者として下の者を簡単に切り捨てるとは…お前は無責任すぎる」
「父上!」
ここで何故フィルベルトの名前が出されるのか理解できなかった。
(あんな無能と!)
嫌悪している兄の方が優秀だと言われているようで不愉快な気持ちになるのだった。
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