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第二章北方四島の絆
閑話7女皇帝の決意
しおりを挟むエセリラの体調は回復に向かい、外に出れるようにまでなった。
宮廷医師はもう一か月と持たないと言われていたのが噓のようだったが、その医師が他国の回し者だった。
エセリラの主治医となり、病死させるのが目的だった。
本来ならばもっと早く計画するはずだったが、ジューリアは慎重で、最初こそはその医師を信用していなかったが、少しづつ信頼させ、宮廷内で一時流行った感染病を治した事で信頼を得た。
しかし、常に信頼のおける侍女を傍に置いての事で隙を見せられなかったが、その医師は関している侍女に薬を盛って判断を鈍らせたのだ。
そのおかげで、誰にもバレないようにエセリラに薬を投了して弱らせ、香炉を用意した。
高額な香炉で麻薬に近い物だった。
当初はジューリアも疑っていたが、エセリラの様態は日に日に酷くなる一方でジューリアも焦った結果だった。
香炉のおかげで一時は回復に向かったのだが、その後に薬を投了して弱らせたのだ。
そして弱ったエセリラに聞こえるように噂を流してしまえば気力を奪えたのだ。
心身とも弱って行けば帝国を乗っ取ることができる。
しかしその計画は暴かれたのだった。
病状と治療法と医師の経歴に不信感を持ったエグバートとナージャはその医師を派遣した大臣が仕組んだのではと思い調べたのだ。
メルセウス伯爵と結託して調査した結果。
真実を突き止めたのだった。
「ルベンスの指金だったとは」
「はい、本人は否定しておりますが」
「責任をその医師に全てなすりつけて終わりにする気です。盲点でしたわ」
帝位を一番狙っているのは義弟のルベンスだった。
今回の事も、ルベンスが仕組んだと考えたが、既に証拠は処分され、元主治医の部屋が犯人と言う事になった。
「エイドリアスの弟だからと調子に乗って…」
「陛下、いかがされます?」
「今はまだ駄目です」
直ぐにでも殺してやりたいと思いながらもここで動くのは危険だった。
今優するべきはエセリラの安否だった。
「席程視察から火急でクラリス様帰国されました」
「急いで通しなさい」
「はい」
第二皇女、クラリス。
帝国の鋼の騎士と呼ばれる程の剣術に優れていた。
「母上!」
「クラリス。良く無事で…」
「姉上は!」
もう一人の娘の無事な姿を見て安堵した。
エセリラの病が悪化してからクラリスは、他国の優れた医師を探す為に視察の合間に医師を探し回っていた。
「危機は脱しました。ですが油断はできません」
「本当ですか」
「ただし問題が生じました。帰って早々ですが貴女に仕事を頼みたいのです」
ジューリアはこれ以上膿を広げるわけにいかないと思い、クラリスにすべてを話したのだった。
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