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第一章
4.別れの挨拶
しおりを挟む家族との時間を大切にしながら、半年後。
リリアーナが竜の国に捧げられる日が訪れ、馬車にて引き渡しの場所まで移動することになる。
「リリアーナ!!」
「えっ?」
馬車で移動しながら景色を眺めていると早馬が大急ぎで向かって来た。
「馬車を止めてください!」
「ハッ!」
御者は急ぎ馬車を止め、急いで馬車から出て行く。
「リアン!」
早馬を走らせこちらに向かって来たのは第一王子のウィリアムと第一王女のマリー・アンジェだった。
「お二人共!」
「良かった…間に合って」
「急いで正解だった」
二人は単独で馬を走らせてここまで駆け付けたのだ。
変装もしているので護衛もつけない所を見ると何も言わずに出てきたことが解った。
「酷い…見送りにも来ないなんて」
「あの男、婚約者を売っていながら…私達に見送りの日を来月だと言ったんだ!妙だと思って父上に尋ねたら今日だと」
二人は視察のため、王都から離れていた。
竜の国に向かう時は見送りをするつもりだったが急に予定が変わったと連絡がきたが妙だと思ったのだ。
「あの最低男、私達に見送りをさせないように裏で手を回したのよ」
「船が急遽動かなくなったんだ…しかもその前日に手紙が来たんだ。君が国を出るのが伸びると」
すべては二人を見送りに行かせないた為に仕組んだのだろう。
特にアンジュとリリアーナ親友でもあるので妙な気を起こされたら困ると思ったのだ。
何より、王族の二人が見送りに来られたら、リリアーナが大事にされているか解る。
見送りにも来られない程価値のない女だと演出する必要があったのだが、ここまでするとは本当に最低な男だと思ったリリアーナは婚約解消して良かったと思う。
「リアン、ごめんなさい。私…」
「止めるんだ、今さら謝ってもどうにもならない。今すべきはそんな事じゃない」
ウィリアムは泣きそうになる妹を諫め、ある物を差し出した。
「殿下?これは」
「我が国に伝わる剣だ。かつて竜が姫に贈ったとされている」
「待ってください…そんな物を」
「だからだ。竜との絆の証である剣を持っていけば…もしかしたら喰われなくて済むかもしれない。万一の時は君を守ってくれるかもしれない」
双子剣で白竜の牙で撃たれた物だった。
この剣は竜が愛した妻の身を守る為に特別な魔力が宿っていると言われていたが、未だに剣が本当の力を発揮した事はない。
「私からはこの鏡を…こちらも竜が姫に贈った鏡ですわ。どうかご無事でありますように」
「王女様…ありがとうございます」
「どうか約束して…必ず生き延びると。これは私からの最後の命令です。絶対死んではなりません…いいですわね」
ウィンドル王国の王は決して冷酷な人間ではなかった。
情に厚く慈悲深い心を持っていたが王として、私情を交えることはできなかった。
この国の守り手である聖女は必要だったが、世界樹のお告げを無視することはできない。
今は各国で戦争をしており、その上竜の国を敵に回すことはできなかった。
既に世界樹の花が枯れだしている。
世界樹が枯れれば人間界でも影響を受けてしまう。
その為には天の住人。
竜の一族の力を借りる必要があるのだだった。
「竜は美しい物が好きだと聞きますわ。ならばできるだけ美しくない振る舞いをして、花の交換をさせろと言わせればいいのです」
「王女様、それはある意味困るのでは?」
「散々社交界で悪しざまにされた貴女が利用されるよりはいいですわ!あいつ等、調子が良すぎるのよ!絶対に許せない!」
アンジェの言い分は正論だった。
都合のいい時だけ利用する貴族達は我が身の事しか考えていない。
「貴女の最後の条件は任せて」
「ありがとうございます」
アンジェは約束を守ってくれると信じている。
「お二人共、本当にありがとうございます」
「妹が王都でツライ思いをしても庇ってくださったことを心より感謝しております。そして今も…」
「泣くのは早くてよ?竜の国捧げられるからといって最悪の事態になると決まったわけではありません」
アンジェはどんな手を使ってでも竜の国に行く手段を得ようとしていた。
「いいですか、生き抜く事を考えてるのですよ?」
「後の事は私達に任せてくれ」
「はい…ありがとうございます」
最後になるかもしれない抱擁を交わし、二人と別れを告げ、馬車は目的の谷へ向かった。
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