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第一章

8.勘違い

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テーブルに並べられた料理の数々をぺろりと平らげ、デザートまで食べたリリアーナは満足だった。


「もう思い残すことはありません。ありがとうございます」

一年後は食べられてしまうが、こんなに美味しい料理を食べさせてもらって幸せだった。


「何を言っているんだい?夕食があるのに。これは露払いだよ」

「露払い!竜族の皆さんはこんなごちそうを露払いにしているんですか!」

「うーん」

イサラは戸惑った。
今食卓に出した料理は庶民の作る料理であり、特別に高級な食材は使ってない。

新鮮な卵と肉は使ったが庶民でも気軽に食べられるのだ。

「僕のお嫁さんは貧しい貴族の生まれなのかな?」

「いいえ、陛下。辺境地の姫君ですので…そこまで貧しいとは思えません」

「じゃあ人間界の食文化が貧しいんだね」

ホロホロ涙を流すイサラはこれからもっと美味しい物を食べさせてあげようと誓った。

「お嫁さん、今回は急な話を受けてくれてありがとう。でも聞いていた人は随分違うね」

「うっ…」

「話では、すごく変わった髪型をしていた女の子だったんだけど。顔色も悪くて死んだ魚のような肌と目元にはクマがあって見るからに不健康だったけど…」

「その…」

完全にバレている。
しかし、イサラの表情は怒っているようにも見えない。

「申し訳ありません、その方は体が弱く私が代理に参りました。でっ…でもお役目はきっちり果たしますので!」

「代理?そうだったの?」

「そうだったのって、それだけなんですか?」


本当ならもっと怒ると思ったのだが、拍子抜けだった。

「虹の橋を越えた時点で君は僕の条件に当てはまっているし…何よりお付きの竜馬達が認めた。ならば問題ないよ。それに若い子の方が良いしね」

「若い方が良い?」

「一番望ましいのは10歳から13歳ぐらいの女の子」


この時またしても勘違いをしてしまったリリアーナは思った。


(幼い方がお肉が柔らかいからだわ!)

更なる衝撃を受けたリリアーナは勘違いをしていた。


「小さい方が教育もしやすい…どうしたの?」

「いいえ、騙すような形になってしまい申し訳ございません」

「ああ、謝らなくていいよ。これも天のお導きだよ…きっと白竜様は僕の願いを聞き入れてくれたんだよ。幼いお嫁さんが欲しいってお願いしたから」

(お嫁さんという名の生餌か)


二人の間には大いなる誤解が発生しているのだが当人同士は気づく事もなかった。

そしてその大いなる誤解は家臣達を巻き込むだけでなく、国全体を巻き込む大騒動になるのだが。


まだこの時は夢にも思っていなかった。


そして噂とは正反対の竜帝陛下と後に天空の皇妃として君臨するようになるのはまだ少し後の話だった。


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