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プロローグ
しおりを挟む夏が過ぎた肌寒い季節。
墓参りの帰りに俺はいつもの道を歩いて行った。
両親の顔は知らない。
物心つく頃には既にいなかった。
寂しいとは思わなかった。
優しい祖父に育てられて愛情を与えてもらった。
ただ親がいない事で周りは色々言ってきたが、それでも俺は不幸ではない。
そう思っていた。
「蓮、人は一人では生きていけない」
「じいちゃん?」
「一人じゃ生きていけない。だから蓮、お前もちゃんと家族を持つんだ。私のように」
早くにばあちゃんを失くし、寂しい思いをしていたじいちゃんは自分が死んだら俺を一人ぼっちにすることを恐れていた。
「蓮、お前は幸せにならないとだめなんだ…お前の」
「じいちゃん、俺は今でも幸せだよ」
俺は自分の親の事をあえて聞こうとしなかった。
聞けばじいちゃんを悲しませると思っていたからだ。
「蓮、お前は優しい子だ…だからその優しい心を失くさないでくれ」
そっと手を握り、じいちゃんは天国に旅立った。
それから三年の月日が過ぎた頃に、俺は命日に墓参りを終えた帰り道だった。
空を見上げた。
「今日は随分と月が大きいな…なんか月が赤く」
ん?
月って赤かったか?
「なんか月が迫って…わぁぁぁぁ!」
鈍い俺でも解る。
普通じゃないと解った俺はその場から逃げようとするも、足元が光る。
「何だよこれ!」
光に吸い込まれた俺はなすすべもなかった。
「成功したか!」
「お待ちください殿下!」
何だ?
でんかって何だ?
耳元で聞こえる声。
背中が痛いと感じる俺はゆっくりと目を覚ますと。
「聖女殿…」
「は?」
「なっ!」
光が消え、俺の視界には仮装した二人がいる。
「どういうことだ!何故聖女ではない」
「これは失敗です…」
「何だと!失敗など父上になんていえばいいのだ!責任を取れ!」
「そう申されましても」
俺を無視して話を進めるな。
失敗ってなんだよ。
「おいそこのアンタ」
「この私に…」
「事情は知らねぇがお年寄りには優しくしろよ。虐待か」
「なっ!」
「それかた無駄に声を上げてキャンキャン叫ぶなよ。子供じゃねぇんだからよ」
状況は飲み込めない。
事情もまるで理解できないのだが、とりあえずか弱い老人を怒鳴る行為はいただけないな。
うんうん、俺は根っからのおじいちゃんっ子だ。
友人にはじじコンと呼ばれていた程だ。
暗闇で顔が良く見えなかったが、月の光で少し明るくなった瞬間…
「殿下!」
「見つけましたぞ!」
何かぞろぞろと来た。
しかも馬に乗ってゲームで見たような騎士の仮装をした男がぞろぞろと現れた。
「おお聖女よ!よくぞ呼びかけに答えてくれた!」
一人年配の人が声を上げた。
いや、さっきから聖女って何?
「父上!この者は…」
「教皇よ、異世界の聖女は随分と…なんというか」
「いや、俺聖女じゃないんですけんどね」
さっきから何か誤解がある。
なので誤解を解かなくてはならないとえきるだけ声を優しくしたのだが…
それがいけなかった。
何故か俺は拘束され何故か怖いおじさんに囲まれ尋問されてしまうのだった。
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